ここちよい風 『窓ぎわのトットちゃん』
刊行から40年を超える不朽の児童文学 いわさきちひろの絵が呼んでくれた
終戦間際まで東京にあったトモエ学園 幸福で伸びやかな小学校の物語
暮らしと芸術 躰と心のありよう 外国の言葉や文化との出会い
海のものと山のものとが出会うお弁当の時間 ちくわ煮のお鍋
こどもが素直な心を持ったまま大きくなるのは 易しくはないのやも
できると感じること 自分を信じる土壌が 日常の中で育まれてゆく自然さ
幼いうちに出会いたかった いきることはもっと楽に たのしくなったろう
全身全霊のあそび 次の瞬間 まして明日のことなぞよぎらぬ無心のとき
友だちと自分の しあわせで窮屈な世界 こどもでいるというのは時に酷
一足跳びに大人になりたかった 自分を信じてゆける継続的な声掛け
多くの人々から いろいろの場面でもらった言葉 じぶんの気づいていない
自分をみつけてくれる他のひとの存在 あらゆる場面で関わりあう有象無象
人と違ったっていいじゃない とてつもなく豊かでカラフルなこの世界で
自分らしくいたらいい のびのびしていて 意識が向けば変わっていかれる
ありのままで既に完璧だと 自分が感じられる喜び 抱きしめて 解放する
子である時期の多くを発せない瞬間に すっと分かってくれる
想像してくれる存在の大きさ 肉体や精神の差異 感性の方向性
異なる土地で生活してきた子が 一人加わるだけで生じる学び合い
あたらしい音 表現 色づかい 心のふるえ 調和していく不思議
誰もが”がっかりされる”ことのない行事 学校は安心できる場で
幼くいられるときは一瞬 こども時代の記憶はわたしたちを自由にする
子どもへの深い眼差し 顔や手の表情 こどもの視点が入っている
お花を摘む指はお釈迦様のよう 揃えられたひざこぞうの丸さ
トットちゃんの素敵でやわらかな心 つよくやさしい 根底のあかるさ
こどもの真実が詰まっている このうつくしさは子どもにも大人にも
沢山笑ってはっとして 流れる涙は幾種も あのとき止められなかった
言葉にできなかったこと あなただけが背負わなくてはならないものはない
わくわくとどきどきの連続 はらはらするうち あの頃感じていた色々が
昇華されてゆく 流れ続けるときの中 このきもちはずっと持っていたい
『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子・’81.8 第29刷・講談社/絵 いわさきちひろ 装幀 和田誠)
今冬にはアニメ映画も公開。