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【詩】亡夏

 或る夏 かつての街

 夕刻のチャイムが響いて
 ここに戻ってきたと改めて知る
 田畑の見える実家から
 祭囃子が聞こえる
 幼い頃
 嫌々練習していた日々が
 哀しく重なった

 夜の祭りは賑わっていた
 久しぶりに故郷に戻っている
 友人たちとビールを交わす
 お酒を呑める歳になった
 少年時代が遠くなった
 チンドン 聞こえてくる祭囃子に
 永久は無いと教えられた

 花火が上がると
 深い夜が鮮やかになった
 何十発も上がって
 散っていく

 参ったな 辛いな
 今日の夜は静かに慰めてくれる

 何時まで
 僕はこの街に戻れるのだろうか
 故郷の温もり 吸い込んで
 また都会に戻るんだ

 僕はこれ以上言えなかった

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