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亡き父を探す、没作ゥ
物心着く頃には父親という存在が居なかったし特に気にもしていなかった。
成長していくうちに周りの友人たちが父親の話をしていたので気になった。
「ねぇ、お母さん 僕のお父さんはどこにいるの?」
そう聞くと母は困ったような哀しいような何とも言えない表情をして
「あなたのお父さんはね、星になったのよ」
星になんてならない事ぐらい成長していくに連れて分かった。どうやらうちの父親は亡くなっているようだ。それも離婚した後に亡くなっていたみたいだ。
実はそれも良くない亡くなり方をしたそうで父は自殺したらしい。
母はあまり語りたがらないがたまに交流のある父方のおばあちゃんが色々と話してくれた。
「お父さんはね、バーテンダーだったの。働き過ぎて疲れちゃったのかもね」
バーテンダーそんな仕事をしていたのか、そう言えば母も昔はお水をしていた。その関係で知り合ったのだろうか
お酒を飲める歳になっていた僕は自分のルーツを知りたくなった。
「その働いていたBARの名前を教えて」
「今もあるのかしらトップフロアというお店よ」
検索して見ると今もまだ営業しているようで夜景が見えるオーセンティックなBARのようだ。
行ってみるか…
BARなんて行ったことが無かったので色々と調べて服装を整えて扉を開けた。持ち合わせも充分にある、大丈夫だろう。
「いらっしゃいませ、お好きな席におかけください」
隅の方に座る。全面的に窓が張られていて夜景がよく見える。
「お飲み物はどうされますか?」
「何がありますか?」
「こちらメニュー表になります。味の好みを伝えて頂けたらお作りできますよ。フルーツを使ったカクテルもあります」
「じゃあ、それで」
「炭酸はあったほうが良いですか?甘いのとさっぱりしたのではどちらが良いですか?」
「炭酸有りで甘いのでお願いします」
「かしこまりました」
女の人が慣れた手付きでシェイカーを振る。出された生ハムを適当につまむ。
「お待たせ致しました」
ひと口飲んでみる、甘くて美味しい
「お姉さんはここで働かれて長いんですか?」
「そうですね、4.5年になります」
4.5年だと父のことは知らないかもしれないな…これは望み薄かな
「昔、僕の父親がここで働いていたんですよ」
「あら、そうなんですね」
「もう死んでしまったのですが」
お姉さんは何と答えて良いのか迷った様子で困惑している。
「すみません、いきなり来てこんな話をして」
「いえ、大丈夫ですよ。もしかするとオーナーなら知っているかもしれません」
「本当ですか、それならオーナーさんに会ってみたいです」
「そうなんですね、連絡してみますね」
いきなり来てこんな話をしているのにお姉さんは優しく対応してくれた。
「今は別店舗の方に居るようです」
どうやらこの店のオーナーは複数店舗経営している人らしい。
「それならそのお店に行きます」
「分かりました。場所を教えますね」
メイドカフェQT…?メイドカフェなんて行った事無いぞ
不安を抱えながら会計を済ませる。フルーツカクテルは一杯1500円もする事にびっくりした。
Googleマップを頼りにメイドカフェへ向かう。
地下一階、エレベーターの閉を押す
開
「おかえりなさいませ!ご主人様」
そうゆうつまりで来てないので少し面食らう
隅の方に腰掛け、システムなどを聞く。適当に飲み物を頼む
一人奥の方に男性が居る。あれがオーナーか…?髪が赤い、父はあの人の下で働いていたのか
すると、向こうもこちらに気付いたようで嬉しそうな哀しいような何とも言い難い顔で居る。
「いらっしゃいませ、大きくなったね」
「僕のこと知ってるんですか?」
「小さい頃の写真は見たことあるよ」
「そうなんですね」
何とも言えない空気が流れる。今は学生かどうか、お酒は飲めるのか、など他愛の無い話をした。だけど僕はそんな話をしに来た訳ではない。
「父のことを教えてくれませんか」
「もちろん、話せることは何でも話すよ。何が知りたい?」
何が知りたい、僕は父の何を知りたいんだろう
「父はなぜ死んだのですか?」
「それは分からないんだ。遺書も残っていなかったからね。ただ、その当時コロナが流行っていたんだ」
コロナ?そんな事で?
「今はワクチンも普及しているけれど当時は対処法が無くて人が街から居なくなったんだ。そのせいでBARにもお客さんが来なくなってしまって…それも関係あるかもしれない、売上が上がらないといけないってね。」
「父は仕事が上手くいかなくて死んだんですか」
「それは分からない。俺が売上について強く言い過ぎたのかもしれない」
この人を恨むべきなのかもしれない、でも僕の中に父の記憶は殆ど無いから恨む程強く思えない。
「なんで死んだのか何度も考えたし自分のせいか、とも考えた。ただ考えたところで帰ってくる訳じゃ無いだろう?」
「…そうですね」
「もちろん今でも悲しいけれどそれ以上に怒りの気持ちもあったかな、なんでそんなことしたんだって。今はもうその気持ちも薄まってきてしまったけれどね」
父は僕を遺して死んだ、それは事実だ。僕のことなんてどうでも良かったのだろうか、父にとってこの世に繋ぎ止めるなにかにはなれなかったのだろう。
「その日はお酒をたくさん飲んでいたからね、アイツらしいや」
「そうなんですか」
「そうだよ」
実は間違いだった。そんな事もあるのかもしれない。お酒は判断能力が鈍る。僕もなんだかふわふわしてきた。
「そういえば…いや、これは話さない方が良いか」
「え?なんですか?」
「うーん、あまり気の進む話でも無いし連絡が着くかも分からないんだけどね」
「それでも知りたいです」
なんだか探偵のような気分になってきた。自分のルーツを知る、探偵
「実はね、君の父親には彼女が居たんだよ」
「彼女ですか?え?彼女?」
「あーやっぱり言わない方が良かったか、まあいいいや事実は事実だ」
「つまり、僕の母とは違う女の人と付き合ってたってことですか」
「そうゆうこと」
なんてことだ。いや、確かに父は離婚しているからそうゆう事もあるのか、僕に対する執着が無かったのも…その女のせいか
なんか、ムカつく
「その人とは会えますか?」
「連絡先、もう変わってるんじゃないかな…どうだろう連絡取ってはみるけど…あ、その子が昔働いてたお店なら今もあるよ」
「教えてください」
「分かった、場所はね…」
オーナーと連絡先を交換して、その女から返信があれば僕に連絡してくれることになった。
面識の少ない父親の場所なんて興味が無い、という事実、リアリティが無かった為没ゥ!!
気が向いたら書くかも