家守綺譚
読んだことで、私の世界が変わって早や1週間。
1ページ目にして、何度も本から目を上げて回想に飛んだ。
ー 忘れられない従兄弟がいる。
ボートの上からピースサインをしている20才の遺影。
ボートのオリンピック選手だった気仙沼の叔父を驚かせようと
叔父に内緒で大学のボート部に入っていたそうだ。
高校生の頃、9才の私の見舞いに、オルゴールを買ってきてくれた。
いつも周りの幸せを願って動く、稀な人。
ボートに乗って現れてくれぬかと、彼の母はどれほど願ったろう。
ー 私も英語を仕事にするのを辞め
掃除のバイトなどしていたがそれも辞めて1年半
先月始めた荷物運びのバイトも
車が川に落ちたり熱が出たりで4日で辞めた。
自分を、売れない(というか書かない)もの書き、として見てみた。
すると今の生活とあり方がほぼ、収まる所に収まる。
家賃がいらず、入るはないが出るもない、水道も義務もない森暮らし
飢えるまで、この自由を繰り広げればいい。
車が川に落ちて、他の誰かになろうとするのを止めてくれたのだ。
外に溢れているものはほぼ、私には過剰。
ネットの向こうを覗くのをやめた。
ーこれを読んでから、飼い犬を撫でる気持ちに何かが加わった。
この子も野良だったのが、自分から夫の所に飼われにきた。
無邪気で人懐こく、時々強く誰かの心をつかむ。
可愛い、以上の役割、果たしてこの子にあるか?
そう。河童もいる。掛け軸の中から出てきたサギと争いもする。
それを犬が止める。花が人に恋をする。狸が松茸でお礼する。
この世界。
数字も肩書きも、時間さえなく命のあるなしも問わず
ただ、純粋な何かが行き来して必然ですれちがう。
庭や物語と話をしていた子どもの頃からの私が、落ち着く世界。
村田エフェンディ滞土録、夏虫冬草、と続編を読み進めている。
夏目漱石にも手を出した。
しばし明治に遊びますゆえ、令和を留守にします。
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