見出し画像

趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.235 映画 山田洋次 「男はつらいよ 葛飾立志篇 」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 山田洋次 の「男はつらいよ 葛飾立志篇 」 (1975/日)についてです。


男はつらいよシリーズ第16作目。このシリーズが一番脂が乗って調子がいい頃の作品。

前作15作目の「寅次郎相合い傘」も次作17作目の「寅次郎夕焼け小焼け」もどちらも日本映画史上に残る傑作。

その間に挟まれた作品で目立たないが、作品のクオリティはなかなか。

シリーズで何度か勉強や学問に憧れる寅さんが描かれる。

中学を退学になった寅さん、何度も何度も俺は勉強ができないからと言い、

若者や甥っ子の満男には勉強しろという。

いつかはマドンナが夜間学校に通い、自分も入学願書まで出す寸前まで行った話もありました。

今回のマドンナは学者の助手、勉強が生きがい。

そして考古学の教授も出てくる。

学問にずっと憧れるが、根気がなく勉強しなかったフーテンの寅さん。

寅さんとは正反対のテーマだからこそ、そのギャップが面白いのでしょうか。



物語は、ある日とらやに山形から修学旅行のついでに母子家庭だった女子高生(桜田淳子)が訪ねにきた。

寅さんが毎年欠かさず手紙や少しのお金を送ってくれるので、会ったことがない実の父親かもと思っている。

そこへ寅さんが帰ってきて、昔無一文で倒れていた寅さんを助けてもらった食堂の女性の子供とわかる。

恩のあるその女性は昨年病気で亡くなったと聞かされる。

寅さんは彼女の墓参りに山形へ行き、その女性のお墓のあるお寺の住職に話を聞く。

学のない彼女は顔の良いだけのロクでもない男に引っかかり、娘を産んだが責任を取らず逃げられてしまい、その娘がとらやに訪ねにきた子だった。

恩のある彼女と同様に学のない寅さんは学問の大事さを自覚し、柴又へ帰る。

ちょうどその頃御前様の姪で大学の考古学の助手をしている女性(樫山文枝)がとらやで下宿していた。

山形の住職から聞いた受け売りの学問の話を彼女にすると感心され、寅さんも良い気になり一目惚れする。

彼女に気に入られるには勉強するしかない、と思いまずはメガネを買い柴又中の笑いものになる。

しかし御前様に寅さんの家庭教師を頼まれるように言われ、寅さんはソワソワして、そして講義の内容もさっぱりわからないが、いざテキヤの口上を淀みなく披露すると彼女は大いに笑ってくれる。

数日後、とらやに助手の女性の師匠の考古学者がやってくる。

汚い服装、髭面、タバコを随時吸うところで大学教授には見えないが学問の知識はすごい。

寅さんから恋愛の話を聞くと寅さんのことを師匠と呼ぶほど恋愛下手。

実は助手の女性を密かに恋をしている。

ある日お酒に酔った勢いで、兼ねてから彼女へのプロポーズの詩を作っていて、それを渡す。

助手の彼女は思いなやみ、寅さんへ相談する。

寅さんは事情を知ったからには身を引くのが男だととらやを去る。

実は寅さんの早合点で彼女は教授のプロポーズを断ろうと思っていた。

その頃寅さんは教授と振られた同士旅をするのであった。



最初寅さんの子供かも!と言うところしか出ていないが、若い頃の桜田淳子さんが女子高生を演じていて、とても可愛らしかった。

演技も上手く、そのまま女優を続けていたら本当にマドンナとして出演していたかも。

今世間を騒がしている宗教団体に入ってしまいました。

今回のテーマは学問。ただし住職の受け売りだったり、マドンナの気を引くために勉強しようと動機は不純だが、それでも今作やシリーズの中でも、妙に学問への憧れがある寅さん。

けど学があると寅さんじゃなくなってしまいますが。

学があれば、食堂の女性のように男に騙されない。

学があれば、マドンナの相談を聞いてやれる。

「己を知る」ために学問を修めるとお坊さんに聞いたが、

大学教授のようにとことん勉強してもなかなか「己を知る」ことはなかなかできないような。

勉強ができる教授も、勉強できない寅さんも、振られて一緒に旅に出るラストは良いですね。

今日はここまで。




寅「姉ちゃんは、何のために勉強しているんだい?」
礼子「さあ・・・」
寅「考えてみたことは、ねえかい?」
礼子「そうですね・・・つまり」
寅「己れを知るためよ」
/「男はつらいよ 葛飾立志篇」より






この記事が参加している募集