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ふたりのロッテ(訳者あとがきより)


大好きな児童文学『ふたりのロッテ』。
ドイツの詩人&作家、エーリヒ・ケストナーの作品です。
訳者は翻訳家・口承文芸研究の池田香代子さんです。
その池田さんの「あとがき」を、「今」書き留めておきたくなりました。

訳者あとがき

─ でも、がっかりすることはありません。わたしたちには、ケストナーの本があります。ケストナーは、子どものつらさを子どもに代わって言い表してくれます。
(略)
『ふたりのロッテ』は、ケストナーが、第二次世界大戦が終わってはじめて発表した、子どもが主人公の作品のひとつです。
(略)
戦争中、ケストナーは自由な執筆活動を禁じられていました。政府だろうがなんだろうが、おかしいと思えば ずばずばと批判する人だったからです。
(略)
じつはケストナーは、この作品を戦争中にいったん書きあげているのです。命の危険にさらされながら、政府に目をつけられている人物として、社会からひどい仕打ちをうけながら、よくこれほど楽しい、すみずみにまで神経のいきとどいた物語を書けたものです。
(略)
この作品をつうじて、ケストナーは、どんなにひどい状況でも、生きることはよろこばしいのだということを忘れてはいけない、そしてまた、一見ちいさな悲しみに よりそえなければ、大きな悲しみに よりそうこともできないのだ、と言っているようです。─

     《2006年5月 池田香代子》

エーリヒ・ケストナー作『ふたりのロッテ』
(岩波少年文庫)


2024年11月6日(水)夕方
アメリカ合衆国大統領選挙の開票日に

🌿imo


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