「わかる」と「できる」は違う。学びにおける4つの段階
自身の経験や社内のメンバーにオンボーディングを実施していても、新しい知識を獲得するには、一定の時間がかかるものだと感じています。
できなかったことが、「ある日、突然できるようになった」なんてことはまずないので、地道に習得の時間をかけなければ、「できる」状態になることは難しいでしょう。
知識を獲得する上で、関連する書籍を読んだり、セミナーや勉強会に参加したりといった行動は大事ですが、それだけでは表面上「知っている」だけの状態となり、仕事に活かせる状態とは言えません。
大人の勉強法について解説された『一流の学び方(清水久三子/著)』という書籍の中では、学びの過程には、主に4つの段階があるとされており、それは以下のようなものです。
学びの4つの段階
①概念の理解
②具体の理解
③体系の理解
④本質の理解
具体的にイメージできるよう図にしたものが以下となり、理解のレベルごとに保有しているものやスキルは異なります。
それぞれを解説していきます。
①概念の理解:知っている(知識)
知識を獲得するためには、誰しも「概念の理解」から始まります。
専門分野を学ぼうとすると、基本的な概念や基礎知識、専門用語も覚えなければなりません。仕事中に同僚から話を聞いたり、セミナーや勉強会に参加したりすることでも、知識としては入ってきます。
基本的な知識を持つことで、専門家同士の会話も理解して、時には会話に参加できるようにもなりますが、あくまでも知識として知っているだけの状態になるため、仕事に活かすのは難しい状態です。
この段階では、特定の情報源だけで学ぼうとするのではなく、書籍であれば関連書籍を複数冊読んでみたり、すでにその分野で一定の成果を出している人に話を聞いてみたりするのがよいのではないでしょうか。
そうすることで、重要な共通点やつまずきやすいポイントを把握できるため、最終的な成長スピードは早いような気がします。
②具体の理解:やったことがある(経験)
知識を身に付けた次の段階が、「具体の理解」です。
書籍に書いてあった方法で、「PowerPointで資料を作ってみた」「簡単なプログラムを書いてみた」のように、実際に手を動かした経験を保有している状態です。
知識があるだけで終わっていると、ただの物知りな人で止まってしまいますが、実際に自分でやってみると、当然うまくいかない場面もでてきます。この段階は、まだ顧客に満足をしてもらえる価値を提供できるプロフェッショナルだとは言えないでしょう。
私たちはweb制作会社ですが、クリエイターがこの段階を身に付ける上で、オンボーディングの中に手を動かす機会を多く用意しています。
例えばデザイナーであれば、座学として知識を身に付ける以外に、優れたwebサイトのデザインを模写して、レイアウトの基本や様々なパターン、効果的な文字サイズ、配色などを身に付けていきます。
実際に手を動かしてみると、うまくできない部分が明確になります。そういう意味では、できない自分と向き合うための段階とも言えるでしょう。
③体系の理解:できる(能力)
ある程度の自信を持ってできると言える段階が、「体系の理解」です。
実際に手を動かした経験は自信につながり、基本的なスキルだけではなく、アレンジを加えるスキルも身に付いているかもしれません。
場当たり的な対応も減り、これまでの経験を元に、自分なりに体系立てて考えられるようにもなっている状態ではないでしょうか。
この段階に入ることで、はじめてプロフェッショナルとして周囲にも認められ、価値を発揮していけるのだと思います。
高い成果を得たい仕事において、「やったことがある」だけの人に対して、コストをかけて依頼をしたいとは思わないでしょう。スキルがあるのは当然として、その上でオリジナリティを出してアウトプットができる人に頼みたいはずです。
「守破離」でいうと、教えや型を忠実に守る状態の「守」から、他人の手法も研究しつつ、徐々に基本も破りながら仕事ができる「破」の状態と言えるかもしれません。
④本質の理解:教えられる(見識)
学びにおける最後の段階が、「本質の理解」です。
「体系の理解」でも仕事はできる状態ですが、相手のレベルに合わせて、分かりやすく教え方を変えるような、プロフェッショナルなトレーナーとしては対応が難しいかもしれません。
また、業界の中でもプロフェッショナルとして認知され、書籍の執筆依頼やセミナーへの登壇依頼がくるのも、この段階だと思います。
「できる」と「教えられる」の間には大きな壁があり、いざ他人に教えようと思ったものの、全然うまく教えられなかった経験がある人も多いのではないでしょうか。
仕事として専門領域を追求するのであれば、「体系の理解」で終わらずに「本質の理解」まで突き進むべきですが、それは本質を理解するからこそ、前例のない課題がでてきた際にも対処ができ、他の誰かでは代替できないような存在感を発揮できるからです。
「守破離」では「離」の状態となり、あえて型を破って自ら新しい手法を生み出せるかもしれません。ソートリーダーとして業界の未来を見据えた発言ができるのも、本質を理解しているからこそできることでしょう。
最後に
学びが失敗してしまう典型的なパターンは、「概念の理解」でつまずいてしまうか、「具体の理解」で学ぶことを止めてしまうかの、いずれかであると言われています。
そこで学びを止めず、「体系の理解」まで進むことにより、ようやく仕事をする上で価値を発揮できるのだと思います。
新しい仕事を始めようとしている人は、一定期間は集中して知識獲得をしていく必要がありますが、「自分は今、4つの段階のどこにいるのか?」を意識しておくと、挫折せずに学習を続けられるかもしれません。
すでに「体系の理解」まで進んでいる人は、その道のプロフェッショナルになるために、「本質の理解」を目指すといいのではないでしょうか。
今は人生100年時代であり、一度身に付けたスキルだけで仕事を続けていくことは難しい状況です。スキルが陳腐化するスピードも速いです。
だからこそ、時代に合わせて常に新しい知識を身に付けながら、自分ができる領域を広げていくことが重要だと思っています。
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