【断髪小説】髪切り探偵(9)ロシアン断髪ルーレット
絶体絶命のチンチロ断髪ーー
断髪されているメイドは二人。
一人目はチエイが勝った際に断髪する対象のチアキ。
チアキの髪の毛は、黒髪ロングヘアーで毛先に少しウェーブがかかっている髪型から、断髪されて右側の前髪付近から耳にかけてのラインに少しだけ長いロングヘアーで毛先にウェーブがある髪の毛が残っている状態に断髪されてしまった。
もう一人は僕が勝った際に断髪する対象のシズキ。
シズキは黒髪のストレートロングヘアーを、左右で小さく三つ編みにしてハーフツイン風にまとめている髪型だったが、今は両方のハーフツイン風の三つ編みは切り落とし、後ろ髪も腕で一掴みした分だけ根元から切り落とした状態だ。
そして、僕は後1回でも負けたらチアキが丸坊主になってしまい、僕の負けイコール死も確定してしまうという状況。
そんな状態の中…
そこに突如として現れたのは僕のよく知った顔だった。
「誰だ貴様は!?」
とチエイが驚いているところ、僕にはそれが誰だかすぐ分かった。
黒髪でいつもはあまり手入れのされていない伸び切ったロングヘアーが、今日は綺麗に手入れされて美髪になっている。丸い眼鏡を掛けていて、普段は地味だが、今日に限っては綺麗な清楚系の服装をしている。
「ハルカ!?」
助手のハルカだった。
「先生。大丈夫ですか?ピンチですか?
お気をつけて行ってきてください。って言ったじゃないですか?」
「あぁ…すまない…。
でも大丈夫、僕は負けなーー」
「負けますよ!」
と僕の言葉に被せるようにハルカ君は言った。
そして続けて言い放った。
「どう考えたって負けます。だって相手はイカサマ能力者ですよ?
どう頑張ったって勝てませんよ。ここは私に任せてください。
私が代わりに勝負してもいいですよね?斉藤CEO?」
「あぁ、もちろん構わないよ。
だが、状況はわかっているかね?
次で決着だよ。イカサマ呼ばわりされてたんじゃ〜、私もメンツってものがあるからね。潰させてもらいますよ」
「えぇ。潰せるものならね!」
いつになくハルカ君は強気だった。もし仮に相手がイカサマをしているとして、僕の知る限りハルカ君に勝ち目があるとも思えない。
この勝負の勝敗。僕の死。それを彼女に背負わせてしまっていいものなのだろうか?
「いいんですよ。先生。
私に任せてください」
僕の考えがまるで分かっているかのような発言だった。
いつになく頼り甲斐がある彼女に対して、僕は全てを任せることにした。
「あぁ、分かった。ハルカ君、君に任せるよ」
「ありがとうございます。先生…」
彼女は一瞬遠い目をして、すぐにチエイに対して睨みつけるような表情をした。
「それでは、やりましょうか斉藤CEO?」
「えぇ」
「ただし、順番を変えさせてください。
あなたが先攻、私を後攻にしてください。
イカサマがないのであれば何の問題もないですよね?」
「えぇ。もちろんですよ」
「それでは、斉藤CEO、初めてください」
そういうと、ハルカ君はメガネをクイっと押し上げ、横髪をかき上げた。
チエイによりサイコロは投げられた。
チエイ:4、5、6 シゴロ!
チエイは一瞬驚いた顔を見せたが、サイコロは予想通り高い手でシゴロだった。
やはりチエイのイカサマが使われたのだろうか?
そして、ハルカには勝ち目があるのだろうか?
「それでは、私の番ですね」
ハルカがサイコロを振った。
ハルカ:1、1、1 ピンゾロ 5切り!
「何!?き…貴様何をやった!?」
「さぁ?ただ運が良かっただけじゃないですか?ピンゾロは貴方が出すはずだった?とでも言いたいのですか?」
チエイが焦ったように額に汗を垂らしている。
ハルカは無言で僕からハサミを受け取り。
いつも穏やかなハルカが、まるで別人のような険しい顔でズカズカとチエイの方へ歩いて行った。
そして、シズキの前に立ち、メガネをクイっと押し上げる。
力強くシズキの髪を鷲掴みにして、根元付近でハサミを閉じるーー
ジョキッ!
うっ……とシズキがハルカの勢いに圧倒されて後ろへあとずさる。
だが、ハルカはそんな事はお構いなしにどんどんハサミを入れていく。
ジョキッ!
…ジョキッ!
サクッという音と共にシズキの髪の毛は頭を離れハルカの手の中に。
掴んだ髪の毛はその場に落として、再び鷲掴みする。
ザクッ!…ザクッ!…ザクッ!
という断髪音と主に、容赦なく切り刻まれる髪の毛。
「…やめっ…」
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