セルフ・コンパッション - 2|自分に優しくなるためのトレーニング
1. 仏教とセルフ・コンパッション
私たちは自分の欲求を満たしたい気持ちがあります。何かを欲しがる気持ちもそうですが、成功したい・優位に立ちたいという欲求を満たそうとすればするほど誰かに嫉妬したり、自分勝手に振る舞ってしまい、人間関係がうまくいかないなどの不幸な結果を招いてしまいます。また、「家族のために、自分さえ我慢して働けばいいんだ」という自分を苦しめることで幸せを得ようとすることも、結果的に不幸を招くことになります。このような両極端な感情に対してどのように心を保てばいいのかというヒントが仏教にあります。その心の保ち方は、四無量心や慈悲喜捨と呼ばれるもので、両極端な心の使い方ではない中道を体得する方法です。
慈(love-kindness)
相手の幸福や健康や安楽を願う心
怒りを離れて相手の存在をそのままに受容する心
悲(compassion)
相手の苦しみや痛みが和らぐように願う心
喜(empathetic joy)
相手の成功や幸福をともに喜び長く続くように願う心
捨(equanimity)
相手の人生の浮き沈みを自業自得の視点から適切な距離から見守る心
2. 慈悲と慈愛の瞑想
仏教の慈悲喜捨の考え方がもとになっているエクササイズに「慈悲の瞑想」と呼ばれるものがあります。慈悲喜捨の考えにそって作られた「慈悲の基本フレーズ」を心の中で唱えます(口に出してもOKです)。
このフレーズを唱えるときは、自分を思い浮かべながら行います。それが終わったら、「最愛の人」「恩人」「知らない人」「苦手な人」「全ての人」の順番に、基本フレーズの「私が」の部分を「その人」に変えて(または、イメージして)行います。
「苦手な人」への慈悲に抵抗を示す人が多いと思います(私も最初は驚きました)。まずは、形式的でも構いませんから実践してみるといいでしょう。好評なのは「知らない人」への慈悲の瞑想です。「今日はこの人にしよう!」と瞑想の相手を決めることが楽しみだということをよく聞きます。
3. 慈悲の瞑想のチェックポイント
セルフ・コンパッションは苦痛から自分自身を解放しようとするストイックな心構えです。慈悲の瞑想を自分のものにするために、以下のチェックポイントを時々振り返ってみましょう。
慈悲の瞑想は、自分のリズムでゆったりとした気持ちで取り組めるといいと思います。瞑想中にも苦しい想いや感情が出てくるかもしれませんが、そんなときは、それらの想いや感情から距離をとりながら、ゆっくりと自分のペースでフレーズを唱えてみましょう。