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独占講義

今回もまた倉本聰先生のお話を。

倉本先生には何度も何度もお食事やお酒の席に連れて行っていただきました。

先生を独占してたっぷりお話が聞ける時間。こんなありがたいことある?って、いつも行く前も最中も帰り道も思ってました。

なんてラッキーな人生なんだ。

その時間の中で聞けるお話は、本当に宝物のようなお話ばかり。そしてまた、先生、やっぱり圧倒的にお話し上手なんです。。

はじめてお酒の席にご一緒させてもらったとき、私は26歳、先生はたしか79歳か80歳でした。

全くもって歳の差を感じないというか、私の方が超絶つまらない凝り固まり人間だと思ったのを覚えています。こんっなに話がおもしろい男の人、はじめて会ったと思いました。当たり前かもしれないけど。

その日のことは今でもすごくよく覚えてて

全然かたくない、先生はユーモアがすごくて、お腹を抱えて笑ったことを覚えています。

話の内容も覚えてるけど、ちょっとここには書けないような話。笑


時はたち、お芝居の仕事もおわってから一年くらいたったある時、都内、某素敵な景色のバーにて。

この日は東京にいらしていた先生と2人でお食事。


先生はいつものように「ラスティペン」という先生が考えたお酒を飲まれていて、若い時の失敗のお話をしてくださいました。

これはいろんなメディアにも出ていて有名な話なので書いてもいいと思うのですが

先生が東大を出たあとニッポン放送に勤められていた時のお話。

先生はラジオ番組を作っていました。

当時はテープを使い回していて使ったテープを消してそこにまた録音をしたりしていた。

ある時、上司の方に「明日の放送のテープがない」と言われたそうです。


先生、



なんと、


間違えて、



せっかく収録したラジオドラマのテープ、、消しちゃったんですって、、、なくしたんだっかな、、


😱😱😱😱

もうとりなおす時間もない。

売れっ子俳優さんがでているラジオドラマ、、


想像しただけで恐ろしい。


とりあえず先生は喫茶店に行ったそうです。笑


そして、、

何をしたかというと


どうしよう、、と思いながら




何時間も何時間も、、



タバコを山盛り吸ったそうです、、



先生はもともと、ものすっっっごいヘビースモーカーで、もうそれはものすごいのですが

その先生が仰るのだから相当吸われたのでしょう



そして、何時間も経って

思いついたそうです。


消えてしまったのは

女優さんと俳優さんの掛け合いなんだけど


とり直そうにも

女優さんの予定は都合つかない、

でも俳優さんの方はたしか夜中に時間を作ってくれたそうで


なんと、、

過去の放送のテープの、女優さんの「ええ」「はい」「そうね」などのところを引っ張り出して切り取って、

女優さんが言うはずだった「○○に行った」とか「○○した」みたいな内容のところは

俳優さんに「○○に行ったんだね?」「○○したんだろ」と言ってもらい

それに昔のテープで女優さんが言ってる「ええ」「そうよ」の部分をつなぎあわせて返事させることで物語を動かしたという、、、

過去のテープ&俳優さんの掛け合い、、


なんということでしょう。。


この話を聞いた時、感動と面白いのと助かってよかったのと、感情が入り混じって涙が出るほど大笑いしたと同時に、あーもう、先生大好きだ、こんな人になりたい、と思ったのを覚えています。

なんて大胆で賢くてユーモラスで真剣な。


この苦労を見てその俳優さんは、「あんた、えらいひとだねぇ」と仰ったそうです。


その俳優さんが、





渥美清さん。

そう、寅さんです。




私の大好きな寅さん。

あぁ、もう、いい時代だなぁ、なんなのほんと、皆素敵すぎる、いいなぁもう、ってしびれました。



この話をしてくださったあと先生は

「かな、無駄なことなんてないってことなんだよ。」と。

「喫茶店に行って、何十本と煙草を吸って、どうしようどうしようとずーっと考えた。だから、出てきたんだよ。それがあったから、生まれたんだよ。」と。


先生はそれだけ言って

「はい、今日の講義はおわりです」と笑ってまた煙草を吸っていました。


先生それはほんとにそうですよ、

そんな背筋の凍るような怖い話、からのその時間、

そして生まれたそのアイディア、

その煙草何十本経たからこそうまれたそのアイディアと、その逸話自体が

何十年後、一つのドラマになって私や世の中のいろんな人を勇気づけています。


それにしても、そんなすごいミスもミスにしない、

食らいつくことって、大切だなあ。



先生、まさかこんなとこに私がこんな話書いてるなんて夢にも思わないだろうなぁ。










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