親子2代で造る、古くて新しいドイツワイン【ベルンハルト・フーバー醸造所】
ワインの産地として有名なのはフランスやイタリア。種類はやはりその地域のものが多いのですが、美味しいワインは世界の様々なところで造られています。
今回は私がまだ今の仕事をする前に偶然飲んで驚いた、ドイツの赤ワインをご紹介したいと思います。
甘口ワインで有名なドイツで赤ワイン?
「ドイツワイン」と言うと、ワインがお好きな方は甘口のイメージが強いかと思います。(有名な黒猫のラベルの青いボトルのワインもそうです。)私もそう思っていましたが、そのイメージを覆してくれたのが、「ベルンハルト・フーバー醸造所」という、ドイツ南部にあるバーデンという町にあるワイナリーの赤ワイン。
シュペート・ブルグンダー(ドイツ語はブドウ品種の名前も長くて覚えにくいですね…苦笑)というブドウで造られた赤ワインを初めて飲んだのは15年前。このワインを1口飲んで、こんなに美味しい赤ワインがドイツにあるんだ!と、とっても驚いたのをよく覚えています。
それから何度となくフーバー醸造所のワインを飲んでいますが、最初の驚きを裏切ることなく年々美味しくなり、今ではドイツに留まらず世界的にも評価の高いワイナリーの1つとなりました。
なぜ、甘口ワインが主流だったドイツでこのような素晴らしい赤ワインが造られているのか、その理由に迫りたいと思います。
ワインの銘醸地、ブルゴーニュと同じ条件を持つマルターディンゲン村
ワイナリーのあるバーデンのマルターディンゲン村には、ゲルマンの地に布教に来たフランスのシトー派の修道士によって、なんと約700年も前にピノ・ノワールが植えられており、名産地として名を馳せていました。その理由は、ワイン産地の中でも誰もが憧れるフランスはブルゴーニュにある、シャンボール・ミュジニーの風景や土壌とマルターディンゲン村のそれが酷似していたこと。
土壌は貝殻石灰岩の風化土壌で、太古の昔、海だったマルターディンゲン村は、少し掘り起こすと独特の色合いの土壌が露出し、高品質なワインに欠かせない複雑味をもたらしてくれます。
その質の高さから、この地で栽培されたピノ・ノワールは「マルターディンガー」と呼ばれていたそうです。(今でもワインの辞典にはピノ・ノワールの同義語として、「マルターディンガー」が記載されています。)
その後戦争によって栄養のあるものが手に入りにくくなり、砂糖も足りなかったため甘口の白ワインが好まれるようになりました。そのため戦後には「ドイツと言えば甘口の白ワイン」という印象になってしまいましたが、マルターディンゲンの歴史を知った先代のベルンハルト・フーバーさんは高品質なピノ・ノワールのワインを造ることに情熱を燃やします。
情熱を継ぎ、進化し続ける現当主・ユリアン・フーバーさん
残念ながら、ベルンハルトさんはご病気のため2014年に55歳の若さでお亡くなりになりました。ドイツの赤ワインの素晴らしさを一代で世に知らしめたベルンハルトさんでしたが、亡くなられた時のご子息のユリアンさんはまだ20代前半。一緒に働いていたとは言え、まだ若すぎる年齢に不安もありました。正直なところ、私たちもこれからこのワイナリーはどうなってしまうのだろうかと思っていました。
そんな周囲の心配をよそに、ユリアンさんはベルンハルトさんの遺志を継ぐべく、そして更に品質を上げようと様々な試みを行いながらブドウ栽培とワイン醸造を続け、代替わりした後も品質は落ちることはありませんでした。私たちもそれを嬉しく思っていましたが、ある年、辛口の白ワインを飲んでとても驚いたことがありました。
ベルンハルトさんの時は、赤も白もしっかりと樽の風味を生かした飲みごたえのあるワインだったのですが、ユリアンさんの白ワインは樽は使いはするもののその風味は控えめ、ドイツのように涼しいワイン産地の魅力の1つである、酸とエレガントな果実味を前面に出したものでした。
このワイン自体はとても素晴らしく心から美味しいと思うものでしたが、ユリアンさんからすると、お父さんが作り上げてきたものを変更するというのは恐らく沢山の葛藤があったと思います。それでも、自分がより良いと思ったことを圧倒的な品質で形にしたということに驚き、これからもフーバー醸造所のワインを見ていきたいと感じました。
ドイツだけでなく世界的にその名を轟かす赤ワインを造ったベルンハルトさん、そして30歳とまだまだ若く、とっても真面目で向上心のあるユリアンさんの親子二人の思いを感じながら、ベルンハルト・フーバー醸造所のワインをぜひお楽しみください。
【ベルンハルト・フーバー醸造のワインはこちらでお買い求めいただけます。】
https://www.imaday.jp/c/producer/producer-04/producer-04-03/producer-04-03-01