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造り以外は畑にいたい。Aperture Farm and Winery~アパチャ‐ファーム&ワイナリー~(長野県東御市)訪問記
2023年7月訪問
はじめに
なんだろう、この美味しい液体は・・。
いくら考えても答えを導き出せなかった、その正体は巨峰を使用したワインでした。
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「これが、あの巨峰?」
先入観の塊で、私は勝手に巨峰の価値を下げていたように思うのですが、私の知る限り、巨峰を使用したワインで、断トツに美味しく、みるみる興味が湧きました。
これは日本ワインの価値を高めるものだと思ったし、日本ワインを応援してきたIMADEYAとして、是非お取り扱いできないものか・・。
弊社ワイン担当に相談したところ、そこは当に今後コンタクトを取りたいと思っていた生産者でした。
アパチャーファームとは
Apertureは英語で「カメラの絞り」という意味を持ち、「農園のワインづくり&野菜づくりにフォーカス」したいという思いが込められています。
2011年にぶどうの栽培を始め、有機農業の経験を生かした自然なワインづくりが特徴のワイナリーです。
代表は田辺良(たなべりょう)さん。
アメリカの大学で写真を学び、帰国後、商社に就職。
その後、酒販会社に転職し、国産ワインの担当として全国のワイナリーを訪問されたことからワイン造りを志し、2010年に東御市に移住して新規就農しました。有機野菜栽培を収入の柱にしながら、ワイン醸造用葡萄をじっくり育成中です。
ファーストコンタクト
新規取引を打診したい強い気持ちは抑えつつ、まずはご挨拶だけでもと、畑の忙しい時期に迎い入れてくださったことに感謝とともに、緊張感が増した訪問となりました。
田中駅から、タクシーで13分ほど。緩やかな坂をのぼり、小高い丘に2階建てのそのシンプルな外観にひときわ目を引かれるワイナリー兼ご自宅が現れました。
眼の前には、田んぼの棚田を改良したシュナン・ブランの畑が広がります。
そして車で5分程のところにシュナン・ブラン、メルロー、巨峰、生食販売用に少しだけシャインマスカットも育てていらっしゃいます。
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ワイン造り
東御市は巨峰の一大産地で、もともと種無しの生食用の木を引き継いで、ワイン用に種ありへと5年かけて再び戻したそう。巨峰は28粒ほどの小粒の房にして、全てワイン用に育てています。
驚くべきことに、葡萄作りは完全にオリジナル。醸造はマンズワインさんで、クリーンだけど生きたワイン造りを7年間学びました。
いわゆる自然派の造りとなるのですが、概念から入ったわけではなく、ただ余計なことをしない。畑の自然な酵母で、亜硫酸不使用のワインです。
巨峰のワインに感動して訪問させて頂きましたが、ワイナリーではシュナン・ブラン、巨峰のプレスとフリー、メルローと現行全て試飲させて頂き、シュナン・ブランやメルローの欧州系ワインも、海外のワインの造りと比べられるからこそ、その緻密な酒質設計に唸りました。
ピュアでクリーン、旨みも繊細に乗っている。これぞ亜硫酸無添加・・落ち着いていて、不安定さがない、徹底した衛生管理と健全な葡萄から造られているんだろうなと、きめ細やかな仕事の想像は容易くつきます。
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10年先を見据えて
自分のワインの10年先を見ている、とのことで、本社熟成庫のお話しや、IMADEYA TERRACE 清澄白河でのイベントにも前向きなお返事を頂きました。最終的には「現状の通り、一人でやっている小さなワイナリーです。卸せる量には限りがありますが、12月にワインができるので、それを見て数量のご連絡をいたします。」と、嬉しい事に取引が決定しました。
感動…。
胸がいっぱいで、高鳴る感情のままに、早速取引の決まったワイナリーの畑を見学させて頂きました。
畑は緑がたわわに、よく見ると合間に可愛い葡萄の子達がこれからすくすくと育つであろう具合に実っていました。
爽やかに吹き抜ける風に少しクールダウンして、私達はそっと、畑を後にしました。
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おわりに
田辺さんは料理をしながらお酒を飲むのが好きだそうなので、飲み疲れせず、いつの間にか一本飲める、そういったスタイルにも合うワインを造りを目指されています。
そして、「ワイン=葡萄が9割。醸造以外は畑にいたいです。」と、最後にお話しいただきました。
ただ自分の造りたいワインに実直に、そして10年、その先の未来を見据えたワイン造りに、ワインウェ-ブではない、確固たる信念と情熱を感じる訪問となりました。
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▶田辺さんのワインを飲んでみたくなった方はコチラから!
残念ながら、まだ販売できるほどのワイン数量が無いのですが、
新規取引開始からこれまでにリリースされたワイン9種をご用意して、田辺さん、皆さんで杯を交わしましょう!
※ワインはリリース直前のものも含むため、やむをえず変更となる可能性がございます。