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#84【介護雑記】姉の遠吠え。
映画『ロストケア』で再現された認知症患者とその家族介護者の日常がリアル過ぎた。
特に、斯波宗典(演/松山ケンイチ)と、その父、斯波正作(柄本明)の次第に過酷さを増していく在宅介護の有様は、「介護の深淵」を知らない者から見れば、「漠然ともっている理想の介護像」を殴り飛ばされる様な、信じられない光景に「恐怖」しかないだろう。
”所詮は映画の演出”と、全否定したい気持ちもあるだろう。
だが、あれは本当だ。介護の当事者が言っているのだから、間違いはない。認知症を発症して、”壊れていく”というのは、あぁいうことだ。
受け止められないだろう?
そんなもの”見(看)たく”ないだろう?
義妹(末弟の嫁さん)は、とても気立ての良い娘で、遠くの故郷から、弟の所へ嫁に来てくれた。まだ小学生の子供が二人居る。仕事柄、毎日帰宅の遅い弟、彼女自身も連日フルタイムで仕事をしながら、家計を支え、ほぼワンオペで育児をしている。その苦楽を、私もよく知っている。自分も通って来た道だから。
その義妹が、父の介護について「お義姉さんが大変だから・・・。」と、「もっと私達に甘えて欲しい。」と、言ってくれる。彼女も娘時代に、母方の祖母が認知症を発症し、その介護をしていた母親の苦労を”見ていた”からだ。
ありがたいことだ。
しかし、義妹のその志に甘えて、父の介護案件を振ることは出来ない。
彼女は「認知症」という病を、母親の背中越しに”見ていただけ”であって、その本質を理解しているわけではない。映画「ロストケア」で、認知症患者とその介護者のリアル過ぎる日常を観たら、とても受け止められないだろう。
受け止められなければ、介護は出来ないんで。「認知症」という病を、よく勉強しなければ、介護は出来ない。たちまち『深淵』に、堕ちるだけだ。
私が義妹に振れる案件はない。
例え、認知症や介護の事を彼女が勉強したとしても、それを理解すればする程、「今の私には出来ない。」という事に気づくだろう。
それでも父の介護に手を貸してくれるというなら、仕事も子供の育児もあきらめて、全精力を、こちらに向けてもらわないと無理なんだよ。それを生業とするヘルパーさん並みにね。
その位の覚悟がなければ、私や父を本当に助ける事にはならない。残念ながら。
私の代わりに、父が垂れ流した尿を拭けるか?ウンコを始末できるか?折角作った食事を「食いたくない!」とぶん投げられても、耐えられるか?
一緒に過ごす時間が長くなれば、なる程、悪気のない猛毒を吐かれる、突然キレられる、可愛いかったはずの孫達にまで、悪気なく、その火の粉を飛ばす。
父がコンディションの良い時にしか、会った事がないから、想像も出来ないだろうけど。これから段々と、父も、否応なく壊れていく。斯波正作の様にね。
そして、それに耐えても、義妹には、なんの報酬もないんだよ?
ましてや、法定相続の権利もない。子供の配偶者にはね。孫達にも。だから、親の介護をする法的「扶養の義務」も、義妹にはないんだよ。
「でも、例え相続の権利や扶養の義務がなくても、義父の介護をしたい。」
多分、そう思ってくれる義妹だ。
でもだからこそ、父の介護に、義妹を巻き込みたくはないんで。
”人として”という”高い理想”に燃えている若い彼女には、それを”生業”とするならまだしも、”家族介護者”として、認知症の介護を負担するには、あまりにも、しんどい。その高い代償を背負わせるわけにはいかない。
彼女の熱き清き情熱は、夫である弟と、子供達と、そして、自分自身に注いでもらいたい。彼女の人生において、今は、そういうことが重要な”シーズン”。彼女が取り組むべき課題だ。
私達とは、人生の”シーズン”が違う。
弟夫婦が、もしかしたらnoteの私の記事を読んで、「認知症」や「認知症の家族介護者」の苦悩を、理解してくれるかも知れない・・・。
そんな淡い期待もあったが、彼らはどうも、それをするよりも、「自分達の気持ち」や「自分達の介護の理想」を、私に理解して欲しいようだ。
「私達がコンディションの良い時は、お父さんの介護をさせて欲しい。お姉さんにもっと甘えて欲しい。でも、コンディションが悪い時は、出来ないこともある。それを怒らないで欲しい。私達だって、お父さんの事を想っているのだから。」
「・・・・・・・あそ。わかったよ。ありがとう。」と、言うしかないよね?w
アホか。家族介護者に”コンディション”も何もないんだよ。こちらのコンディションなんかお構いなしに、24時間365日、お父さんは、日々、想定を超えてくるわけでね。
それに対応しきれなくなった時に(=私自身のコンディションが悪化した時に)、君達に介護の案件を振って、君達が「ごめん。今日コンディション悪くてさ。」と断られたら、どうにもならんだろ?
振れるわけないよねーw 甘えられるわけないよねーw
「介護」も「認知症」も、そんな甘いもんじゃないんだよ。
本当にその気概があるのなら、
「ロストケア」でも観て、勉強して来こいよw
”本当の話”は、それからだ。
「ひやかし」や「偽善」じゃ「介護」は、出来ないんだよ。
「お姉さんに”論破”されるから、話すのが恐くて・・・。」
だったら、”論破”されないような、
しっかりした”論拠”と”論考”を持って来なさいよっ!!💢
・・・と、いう、
言うに言えない、”姉の遠吠え”である。
ねぇちゃん、ツラかぁ~・・・・・。