#36 認知症介護を救った一枚のレポート~【コウノメゾット】~
認知症は現代の最先端治療でも「根治」は出来ない。この事実を、私は、『人は生体的限界を迎えると、脳内の自爆スイッチが起動し、認知症を発動する。そして、人もまた、他の動植物と同じように、自然に枯れて、土へと還る。その自然の摂理に、抗うことは出来ない。』と、そう受止めていた。
母はもう、”その時”を迎えているのだ・・・。
適切な介護サービスを受けさせてやりたかったが、世の中はコロナ禍に突入し、通い慣れたクリニックへ行くのも、何だか”命がけ”の状況になり、まるで戦時中の様な、混乱と緊張が続くこの最中に、介護申請は厳しい。
母にも、相当なストレスがかかっていると思われ、不眠、苛立ちから来る「暴言」、昼夜問わずの「徘徊」、薬の服用を嫌がる「介護拒否」、そしてついには、気に入らない事があると、父の事をバシバシと強く叩くようになった。あの母が・・・。
(この頃、83歳の父の腕は、青たんだらけだった。)
いくら「”その時”を迎える」とわかってはいても、この状況は、最悪だ・・・。
やりきれない・・・。何より、父が救われない・・・。
そんな時、webで見つけた一枚のレポートが、私の目を攫った。
それが、コウノメゾットだ。
なに?! 認知症って、治療できるのっ?!
「認知症は治らない。」と思っていた私には、衝撃的過ぎる「救いの手」だ。コウノメゾットについて、次々と調べていった。
【 コウノメゾットとは?!】
コウノメゾットとは、名古屋フォレストクリニックで認知症専門医として活躍する河野和彦医師が提唱する「認知症投薬治療法」。その方式は、コウノメゾットとして、広く公開されている。
要約すると ―――。
認知症は、その中心となる【中核症状】(下の図、赤色部分)と、そこから関連して発生している【周辺症状】(下記の図、青色部分)との2層構造となっている。
私達介護者が主に悩まされているのは、【周辺症状】であり、この周辺症状を、「陽性症状」「陰性症状」「中間症状」に分けて、それぞれにヒットする薬を処方すれば、【中核症状】は、根治できなくとも、【周辺症状】は、改善する、という理論だ。
本人にとっても、介護者にとっても、辛くしんどい【周辺症状】が改善する可能性があるなら、やらない手はない。
web上で公開されているPDFファイル【コウノメゾット2016】、医療者向けのレポートによると、「怒りっぽい」「暴言を吐く」「徘徊する」「暴れる」「暴力をふるう」など、アクティブな周辺症状は、陽性型。
私の母は、うつ病でおとなしい人だったのが、認知症発症後は、「荒ぶる神」に変貌していった。明確な陽性型だ。
一方で、同じ認知症の【周辺症状】でも「気分の落ち込み」「無気力」「無関心」「不安憔悴」「食欲不振」など、所謂、「うつ症状」は、陰性型となる。
なるほどっ!!
だがしかし、時はコロナ禍・・・。
県内で1件だけ、コウノメゾットを導入しているクリニックは車で約2時間と遠い。それにコロナ禍対応で「初診」の受付は中止されている・・・。
どうする?!
そこで購入したのが、この本。⬇️⬇️⬇️
この本の内容を参考に、母の主治医に相談。
中核症状に作用する「メマリー錠」を中心に、「抑えて欲しい陽性症状」に見合う処方を検討してもらった。
因みに、母の陽性症状にヒットし、症状を緩和してくれたのは、医療用漢方薬で「ツムラ抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒」だった。これと、眠剤「デエビコ錠」、「酸化マグネシウム便秘薬」など。
薬が効きすぎると、「沈静化」しすぎてしまうので、そこは様子を見ながら、微調整の必要がある。しかし、”荒ぶる神”が、おおよそ鎮まってくれたので、後半の介護は、こちらも精神的にずっと楽になった。
父の腕の青たんも消えていった。
認知症の他に基礎疾患を抱えている方も多いと思うが、一度、主治医に、認知症の【周辺症状】に合った処方の追加を相談してみることをお勧めする。
【 介護者保護主義:
患者と介護者の一方しか救えないときは介護者を救うこと 】
この言葉に、私は河野医師の認知症専門医としての”真髄”を感じた。
noteでは、驚くほど、介護に関する記事が多い。
その多くが認知症介護に悩まされている方々の心の悲鳴・・・。
しかし、note内で「コウノメゾット」を検索してもヒットしなかった。
そこで、この記事を書くに至った。認知症介護で日々、粉骨砕身している多くのnote読者に伝わることを願っている。
~コウノメゾット関連書籍~