60VISION:長く愛されるスタンダード品を再生させるブランディング (CASE: 26/100)
▲「60VISION」とサステナビリティ
私の30歳の誕生日、自分から自分へのプレゼントは、シングル掛けのソファーでした。広島県に本社を持つマルニ木工がつくる「マルニ60」というブランドのものでした。
私は、「マルニ60」以外にも「カリモク60」、「アデリア60」、「エース60」というブランドの製品を既に保有していました。これらのブランドの共通点は、ブランドネームの最後に「60」という数字が付くこと。
これらのブランドを高次で束ねる「60VISION」という、メタブランドこそが今回紹介したいサステナビリティ事例です。
「60VISION」(ロクマルビジョン)は、1960年代日本のメーカーが作り出した「世界に通用するスタンダード」の製品群に、現代の空気感に合わせた衣を纏わせてリブランディングした取り組みです。なお、「60VISION」は、一つの企業のブランドというわけではなく、上記にご紹介したようなマルニ木工やカリモク家具など、複数の会社が出す複数の商品を束ねるような概念であり、大事な特徴の一つです。
製品の機能やデザインは、1960年代から変わらぬスタンダードとして位置付けており、その変わらぬ製品をブランドの面で現代風にリニューアルさせている点にもう一つの特徴があります。
消費の多様化により次々に生み出される「新商品」、またそれらが持つ表面的でわかりやすい新規性に興味を惹かれ購入してしまう消費者、そういった潮流の中で埋もれてしまった名品たちを蘇らせたのが「60VISION」でした。
私が小売店で見かける家電製品や日用品、加工食品などは、高い回転速度をもって「新商品」の生産と社会的消費を繰り返しており、次の年にはそのモノたちの価値は一般的には低く見られるようになってしまいます。なぜなら、類似品と言って差し支えない程度の新規性しかない「新商品」が、自社や競合他社から次々に生み出され続けるからです。
私はそんな状況に、正直、共感や興味を持てません。
いたずらに新規なモノを生産し社会的に消費させるのではなく、ずっと長く愛されるスタンダードなモノをつくる、それと同時にイメージの鮮度をその時代に合わせて保たせ続ける。そんな「60VISION」のコンセプトには、他分野への応用面で大きな可能性を感じます。
▲参照資料
▲キュレーション企画について
イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。
▲今回のキュレーション担当者
i.lab マネージング・ディレクター 横田幸信
▲i.labについて
i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。
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