石油を吸う髪の毛マット:美容室から生まれた環境保全アイデア。地球を救うヒントは、私たちのすぐそばに、転がっている。(CASE: 61/100)
▲「石油を吸う髪の毛マット」とサステナビリティ
日本人の多くは毎日髪を洗う習慣がありますが、風邪で寝込んだときなど髪の毛を洗わずにいると、だんだんと油っぽくべたついてきますよね。これは、言い換えてみると、髪の毛には油分を留める能力があるということです。この小さな気づきを応用して、アメリカの慈善団体Matter of Trustは髪の毛でできたマットを作り、海に流出した石油を吸い取るのに活用しています。
マットの使い方はごくシンプル。理髪店・美容院から切った髪の毛を集めて髪の毛マットを作り、雑巾で汚れをふき取るのと同じように、石油で汚染されている海の中に入れるだけです。500グラムの髪の毛マットで5.6リットルもの石油を吸い上げることができるのだそうです。
斬新な発見で、間違いなく環境保全に貢献するものではありつつも、これをイノベーションと呼ぶことができるかどうかは、怪しいかもしれません。なぜなら、これは慈善団体による活動で、髪の毛も寄付で調達されるため、お金の回る仕組みはなく、原油流出のあったときにのみ活躍するのでスケーラビリティも限られているからです。
しかし、この事例の面白さはもう一つ他のところにもあります。それは、このアイデアはどこかの研究室ではなく、美容室から生まれたということです。1998年、アメリカで環境保護活動に取り組んでいた美容師のフィル・マッククローリーさんは、テレビでエクソンバルディーズ号原油流出事故の様子を見たときに、ふと「人の髪の毛は油を吸い取るのではないか」と思いついたのだそうです。
環境問題は自分の手には負えないものと思いがちかもしれません。でも、この美容師の例のように、環境意識を持って自分の身の回りを見渡してみれば、どんな職業であっても、ごみとして捨てるしかないと思っていたものにも、地球を救う可能性が潜んでいることに気づくことができるかもしれません。
▲参照資料
▲キュレーション企画について
イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。
▲今回のキュレーション担当者
i.labインターン 柳川悠香
▲i.labについて
i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。
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