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オイル塗装の無垢材:ユーザーがメンテナンスに積極的に関わりたくなる製品(CASE:8/100)

▲「オイル塗装の無垢材」とサステナビリティ

私はウォールナットという樹の無垢材の家具が好きです。私の仕事用デスクも、そのひとつ。今この文章も、そのウォールナットの無垢材の天板の上で執筆しています。

無垢材とは、使用する形状で丸太から切り出した木材のこと。乾燥した薄い板を貼り合わせた集成材と比較すると割れやひびなどが入りやすいものの、やはり天然木本来の風合いを持つ点はその弱点を補って余りあるポイントと言えるでしょう。

無垢材はダイニングテーブルの天板素材としても人気です。ウレタン塗装とは異なり、オイル塗装の場合は水や油汚れなどに敏感で、管理にそれなりの手間がかかります。
オイル塗装は、日常的に水や油を極力残さないよう留意するだけではなく、定期的に無垢材表面にオイルを補充して磨く必要があります。

お分かりの通り、正直言って手間がかかって大変。しかしながら、その手間故に、愛着が生まれる。エイジングして味が出てくるから、ますます大切にしたくなる。そうした心のサイクルが発生します。「手間のかかる子はより可愛い」みたいなことでしょうか。

また、表面に傷や汚れがついてしまっても、やすりがけで表面を削ることで新品に近い状態を取り戻すことができます。

さて我が家では、仕事デスクだけでなく、ダイニングテーブルもオイル塗装のウォールナット無垢材です。子供が3人おり、食べこぼしなどで非常に年季が入ってきましたが、3人とも小学生くらいになったら一度表面を削りたいなと考えています。そのように、家族のライフステージといつのまにか同期している大切な仲間のような存在になっていることも興味深く感じています。
そう考えると、一見、汚れやすく傷もつきやすい短命に思える素材ですが、そのことが結果としてはより長く使い続ける理由になりますね。

新品時の状態を単に長期間維持することだけが長く使い続けるための方法ではありません。敢えてユーザーがその管理に積極的に関われるような仕組みを設けることで、愛着を生じさせ、その商品の価値をどんどん高めることにつながります。
また、長期の利用シーンの中で、どこかのタイミングでユーザー自身自らリニューアル出来るような機能や特性を予め持たせておくことで、その商品の価値を減退させない点も示唆深いです。無垢材は自然素材の特性としてそうしたリニューアルができますが、人工物においてもソフトウエアのアップデートが一例に挙げられるように、そのような特性は持たせる方法は数多くありえそうです。

▲参照資料

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab マネージング・ディレクター 横田幸信

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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