グラデーション:「境界線」の曖昧さが、社会の持続性を高める。(CASE: 92/100)
▲「グラデーション」とサステナビリティ
私はグラデーションが苦手です。グラフィックデザイナーの方ならわかっていただけると思うのですが、印刷にかけたとき、印刷機またその日の天候や湿度などによってばらつきが出て美しく完成させるのが難しいからです。曖昧で繊細な表現なんですね。
そんな「グラデーション」ですが、人間関係に置き換えてみると、サステナビリティのヒントがあります。
一年ほど前のことですが、電動車椅子が乗車拒否されたニュースがありました。「介助のできる駅員がいないから乗車はできない(と言われた)」といったニュースで、「介助するのは駅員だけ」という前提で話が進んでいて、違和感を覚えました。「なぜ、他の乗客が車椅子の人の乗車を支援する可能性が元から排除されていたのか」という点です。これは、鉄道会社が悪いとか、その場に居合わせた乗客が悪いとかではなく、日本の、特に都市部の社会の前提(ルール含め)がそうなっていることが原因です。
私が以前住んでいたパリそしてニューヨークいずれの都市にも、エレベーターもエスカレーターもない駅が多々あります。そんな時、乳母車をひいたお母さんが階段をあがろうとしていれば、0.1秒で(いえ、本当にこの速さで!)誰かが必ず駆け寄って助けていました。
もちろん日本でも助ける人はいますが、日本だと、3秒くらい眺めてからおもむろに手を貸しますよね。つまり、ニューヨークやパリでは、社会が相互扶助前提で動いている−人間関係が緩いグラデーションでつながっているんですね。日本でも地方ではそういったことがあると思いますが、東京のような都会では、助け合いをしなくても生きていける完璧な利便性をなぜか私たちは求めていて、状況がそうなっていないと、たとえばこの事例だと、駅員(あるいは、鉄道会社)が叩かれる。でも、そこにたくさんの“人間”がいるのですから、本来であれば自然に助け合えば済むはずなのに…と思うわけです。日本の都会では、人と人との間に、太く濃い境界線が引かれてしまっているのだと。
日本では多くの親が「人には迷惑をかけないようにしなさい。」と教えますが、インドでは、「あなたは迷惑をかけながら生きているのだから、人から迷惑をかけられた時も、許してあげなさい。」と教えるそうです。どちらが、人間関係として、持続可能性が高いかというのは明白でしょう。
インドのように、他人との境界線が曖昧であることで、当然ながら面倒なことも多いわけですが(!)、人間関係そして社会の持続性の観点からは、より良い状態と言えそうです。
ちなみに、私は性格的には白黒をはっきりつけるのは好きな方ですし、服装も白黒が多いです。ただ、この「繊細で曖昧なグラデーション」は、繊細であるからこそより人間らしく、その人間らしさが社会のサステナビリティを高めていると言えそうです。
▲参照資料
▲キュレーション企画について
イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。
▲今回のキュレーション担当者
i.lab アートディレクター/デザイナー 井上麻由
▲i.labについて
i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。
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