People's Pavilion:解体までを含む建築の全工程において、一切の廃棄物を出さない。オランダの画期的な建築作品。(CASE: 95/100)
▲「People’s Pavilion」とサステナビリティ
「この社会に存在するゴミの半分以上がどこから来るか知っていますか?」「建造物です。建物を壊すと大量のゴミが出ます。その建物をデザインする立場として、私たち建築家にはこの世に存在するゴミの半分に責任があります。」と、オランダのbureau SLA創業者、ピーター・ヴァン・アッシェさんは言います。
建造物は資源の発掘から建設、解体までのプロセスで、リサイクルできない素材を出し、それらが多くの廃棄物となります。今後も世界中に人が増えていき、2060年には世界の建造物は今の2倍に増加する予測で、環境問題をさらに加速させることが懸念されています。
そんな中、ピーターさんは、ゴミを一切出さない方法で建築を行いました。それが、「People’s Pavilion」です。建築デザインファームArupとデザインスタジオOvertreders Wとの協働で作られたこの建築作品は、北ヨーロッパ最大のデザインの祭典「Dutch Design Week」の9日間のためだけに建てられました。世界で一番サステナブルな建物を作ってほしいとの依頼を受け、彼は建築に必要な資材をすべて借りてきて、一切加工することなく使用し、そのすべてをイベント終了後に返却しました。
こうして廃棄物の出ない建築に成功し、この無茶な試みは、大量消費が行われる現代で「あるものを使って何とかする」という考え方を思い出させてくれます。資材に一切の加工を加えないという、一見不可能に思えることを工夫で乗り切るアーティストとしてのこだわりが持続可能性を生んでいるのではないでしょうか?
また、ゴミが出ないという点のみに目が行きがちですが、それだけではありません。すでに生産された中古のものや、あとは捨てるしかないものを借りてくることで、新しく生産するものと比べ、低コストで資材を集めることができる点も魅力の一つです。
私は、サステナブルなものは一様に高価だと思い込んでいましたが、この「あるものを使って何とかする」という考え方は、大学に通う私にも真似することができそうです。
大量生産、大量消費が主流の現代では、新しい資材は当たり前に用いられますが、資源は有限です。そして9日間のイベントのために廃棄物のでない建築をできるのならば、さらに長い期間使える建造物もまた、建てることができるはずです。このようなゴミを出さないための建築の工夫が一般的に浸透すれば…世界のごみの量は半分になるかもしれません。私はそんな時代がくることに期待してみようと思います。
▲参照資料
*The picture has been borrowed from the following Arup website.
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▲キュレーション企画について
イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。
▲今回のキュレーション担当者
i.labインターン 屋代龍平
▲i.labについて
i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。
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