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Blended Whisky:原料の風味は気候などにより変化するが、レシピをチューニングすることで、一定の味を保ち続けている。(CASE: 87/100)

▲「ブレンドウィスキー」とサステナビリティ

私のi.labでの肩書きはシニアエクスペリエンスデザイナーですが、社内ではもう一つの役割を持っています。それはウィスキー部の部長です。i.labにはウィスキー好きが多く、とっておきのウィスキーを持ち合っては、飲み比べています。

ウィスキーには、大きく分けて、シングルモルトとブレンドウィスキーがあります。シングルモルトの方が優れていると見られがちですが、そうとも限りません。例えばサステナビリティの観点からブレンドウィスキーを見てみると、興味深い示唆があるのではないかと思っています。

ブレンドウィスキーは、シングルモルトとは違って、複数の蒸留所で作られた15~50種類のウィスキーをブレンドして作られています。ブレンドウィスキーを作るのはマスターブレンダーと呼ばれる人。嗅覚が優れていて、長い経験を持つ職人たちです。彼らは、相性の良いウィスキーを組み合わせ、個性的なブレンドウィスキーを作ります。

難しいのはブレンド完成後です。ウィスキーは生産された年によって味が変わりますし、気候や材料の微妙な変化によって、原料の味や香りがさらに変化していくからです。また、元のレシピで使っていたウィスキーの生産がストップしてしまって手に入らなくなることもあります。
ブレンダーは、変化していく原料を把握し、利用する量を変えたり、代わりとなるウィスキーを探したりして、新しいレシピを作ります。同じ味を持続するために、原料を常に確認し、変化に対応し続けるのです。できあがったブレンドウィスキーの味は変わりませんが、そのレシピと材料は、常に変化し続けているというわけです。

味を持続できるのは、マスターブレンダーの職人技のおかげだけではありません。そもそも技を発揮するためには、種類豊富な原料が必須です。
ウィスキー蒸留所は、基本的に自社のシングルモルトウィスキーを生産していますが、その一部を樽の状態で販売しています。これらを、ブレンドウィスキーを専門とする企業が購入し、ブレンダーの職人技によって、全く別の製品として販売されているのです。
つまりウィスキー蒸留所は、生産途中の原料を販売・交換し合って、原料の種類の豊富な産業を作り上げているというわけです。

資源不足が問題となっている中で、今後は変化をデフォルトとして受け入れ、ブレンドウィスキーのように適応可能で持続可能な仕組みや業界を目指す必要があるのではないでしょうか。

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。

2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.labシニアエクスペリエンスデザイナー 島田怜南

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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