二本柳覚編著「図解でわかる障害福祉サービス」
今目の前にいるお客さんに対応するのも、かかってくる電話の相手と話すことも全部、仕事ではあるのですが、いろいろとやらなければいけない事務処理がある。大きな組織ならばコールセンターがあったり、受付があったりするのでしょうけれど。日によっては本当に受話器を置いて、メモの途切れた場所を埋めようとする前にまた新たな電話がかかってきたりします。一応相手が純粋なお客さんだったらあきらめもつくのですが、この前、ヘルパーらしき人物が書類の書き方を訊いてきて、しかも訊きながら書いているので、まだ他に訊くことがあるので待ってください、という感じで書く内容を読み上げていて、この人は、利用者にいい顔をするために私の時間を奪っているのだろうか、と考えて、イライラしてしまいました。うちのお客さんでもある人のために頑張ってくれている、なんて発想はゴミ箱に捨てたいくらいの気持ちで、これはちょっと疲れが溜まっているなあ、と思ったりもしました。
久しぶりに障がい者部門に帰ってきて、すぐに、職場に置いてあるのをみかけてこの本を読んだのですが、読もうとして週末お借りしていこうと机の上に準備していたら、他の人が読みたいと言ったので、他の準備していた本を読むことにして、その後そのままになっていました。
それでふと思い出して、改めて読んでみたのですが。
こういう本、ってたいてい、「つまらない」ものなのですが、この本はちょっと違いました。
まずまえがきに、小学生の娘に計算の方法を訊かれたときのエピソードが出てきます。どうして、と訊かれるのだけれど、うまく説明できない。娘にとってみれば、分かっていると思ったのに、と考えて訊いたのに分からない、と言われて、がっかりするだろう、というわけです。そうだよね、と共感したところで、こう続きます。
さて、何らかの理由により障害を抱えることになった人やその家族は、きっと今後の生活について不安でいっぱいなのではないでしょうか。そんなときに、相談した人から「自分はそのことは専門ではないから」とにべもなく扱われたら、不安はより深まってしまうでしょうし、なによりガッカリするでしょう。
ということで、保険医療福祉の現場で働いているであろう読者に向けて、たとえ専門外であったとしても標準的な知識をもってほしいと考えて書かれたというのです。
まえがきの著者は編著なので、書いたのは一部ですが、他の執筆者にもこのおもいは共有されていたようで、全体として、あたたかく、思いやりに満ちた雰囲気がただよっていました。
というか、最初のはじめに、を読んですっかりそういう気分になっていたのかもしれません。でもまえがきでやられて、こんな気分で読み通す人は、私だけではない気がします。
第1章 障害者を支援する際、まず知っておきたいこと
第2章 障害者に関する法制度
第3章 障害者総合支援法
第4章 障害福祉サービスの使い方
第5章 障害福祉サービスの実践事例
第6章 障害者の生活を支える制度
本書の内容はこんな感じになっています。最初の第1章で、障がい者をとりまく状況について、第2章では法制度の概要をたどりながら、歴史も踏まえつつ、現在の考え方を知ることができます。即戦力になるのは、第3章と第4章、そして、障がい者の生活に役立つのは福祉分野だけでなく、年金をはじめとしたさまざまな関連分野の話が第6章で語られています。第5章は、いくつかの福祉施設の事例が取り上げられています。
最初に読もうと思った時よりは私も日常の中で知識が身についていますが、まだまだ混乱状態な部分もたくさんあったので、読んですっきりした部分もありました。ですが、またしばらくして、改めて読むと、また違った気付きがあるような気がします。
最初のヘルパーさんは、目の前のお客さんのために、プロとして一生懸命だったのだろうな、と思います。その心がけは見習いたいですが……。
福祉施設の事例も、事業に対する想いがつよく、とても感銘を受ける内容でした。仕事のヒントもいくつかもらったので、また明日から頑張ろうと思います。