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ブックリスト「障がい者の就労支援」

障害者雇用に関する本なんて、ちょっとマイナー過ぎて、そんなにないのではないか、と勝手に思っていました。
でも実は、障害福祉サービスの中で就労系は就労継続支援A型・B型、就労移行支援、就労定着支援とありますし、今後就労選択支援なるサービスも始まります。これらの事業に関わる人たちの数はかなり多いでしょうし、また企業の側でも、障害のある方と一緒に働くことについて、考える人がいるわけです。
そんな時に、本を読みながら考えるのは、自然なことですし、またそういう人をターゲットにして本が作られるわけなんだな、と思います。

これまで読んだ本を振り返ってみたいと思います(今後、新たに読んだら追記していこうかなと思います)。

企業の取り組み

障害者雇用に取り組む企業のお話です。
社員の約7割が障害者の日本理化学工業がどのように障害者に取り組んできたか、ということについて、丁寧に取材した本です。2023年の24時間テレビでは、この本をもとに、キットパスというガラスにも書けるチョークを開発した経緯がドラマ化されました。

こちらも企業の取り組み、クロネコヤマトでも障害者雇用の歴史は長く、多くの方を雇用する他、クロネコヤマトを今の形にした小倉氏が経営のノウハウを惜しみなく無償の講座で提供して、福祉施設の稼ぎを増やすために取り組んできたことなどの紹介もあります。

歴史は浅いですが、6割の方が障害者という「久遠チョコレート」の話です。とても重度な方が作業できるように機械を工夫するなど、その人の持つ能力を最大限に引き出すことで、たくさんの障害者の力が集めて作った、おしゃれでリッチなチョコレートのお話です。

障がい者の文化芸術活動

どんな風にHERALBONYを知ったのか、今ではもう思い出せないのですが、知的障害などの描いた作品を正当な価格で評価し、ブランドと組み合わせて本物の商品を作っている会社です。ビジョンとして掲げている「異彩を、放て。」という言葉がものすごく好きです。この一年で一気にHERALBONYの商品が身の回りに増えました。

鹿児島の障がい者福祉施設の芸術活動の取り組みです。
つい私たちは、私たちというか、多くの人が普通だと思う感覚、すばらしいと思う感覚でものごとを捉えがちですが、それが根底から揺らぐようなエピソードがいくつも出てきます。
正直なところ、消化しきれていなくて、またしばらくしたら読み直してみたいと思います。

そして、ここに分類してよいのかどうか迷いつつ、加えたのですが、障がいのある当事者が書かれた小説。2023年の芥川賞受賞作です。
受賞の際に、第169回の芥川賞で障害者の描いた作品が初めて受賞というのは遅いという趣旨のことをおっしゃっていてはっとしました。
働くことの一つに文筆業があるという観点から、入れてみました。就労支援ではないのですが。

農福連携

就労系事業所では、畑作業を取り入れているところがかなりあります。
この本に紹介されている農福連携は、福祉寄り、農業寄りなど様々ですが、そこから生まれるシナジー効果、障がいの特性も農業もコントロールできないような部分がある中で、想定していなかったことが生まれた事例が紹介されています。

障がいのある方もチームで活躍

障害者雇用は障害者雇用促進法である一定数以上の従業員数の事業所には、法定雇用率が適用されます。でも、中には、法律を守るために雇っているけれど、本当にその人の能力が活かされているのだろうか、と感じられる例があると言われています。
具体的にどんな風に、今ある事業の中のどの部分を担っていただくのか、について考える時に役立つ本だと思います。

下記の2冊はいずれも、福祉事業所の方が書かれた本です。福祉事業所は、利用者さんの工賃は売り上げから出さなければいけませんが、スタッフは報酬が出ます。だからといって、それに甘んじているわけではありません。
そもそも売り上げを伸ばすための経営に関しても力を入れているし、チーム一人一人の力を最大限に活かすことを考えています。
もちろん、人に注目して事業を行う度合いは、一般の企業よりも大きいかもしれませんが、福祉だからできる、効率的な経営をしなければいけない企業はできない、なんてことはないのではないかと思います。


障害者雇用を研究する

学術的な見地から、障害者雇用について考えた本を紹介します。
こちらの方は、障害者雇用だけでなく、障害に関係する様々なもやもやを経済学的に分析した本です。著者のお子さんに障がいがあるとのことで、自分は研究者だから、やはり経済学的な見地から考えなくてはいけない、ということで、「障害者の経済学」を書いたそうで、この本は新版になります。

他方、こちらの本は、完全に障害者雇用に関して分析した本です。著者はCSRの専門家で、その研究をする一環で、障害者雇用について調査研究を行っています。アンケート調査などの分析結果から、障害者雇用をする中小企業が業績を上げている理由について検証しています。もちろん簡単ではないとは思いますが、希望が湧いてきました。

はたらくをみんなに

働かなければいけないというわけではありません。
でも働きたいと思った人が、少しでも働けたら、すごく幸せな社会かな、と思います。

障がい者のはたらく、について、人はなぜ働くのか、という基礎的なところから考えているのがこの本です。障害者雇用について考える、入り口になる本かな、と個人的に思っています。

そして、はたらくをみんなに、のために大切なことは、「合理的配慮」だと思います。得意不得意がある、障害のためにできることできないことがある、でもちょっとした工夫でできるようになることがある、あまりに大きな負担がないとできるようにならないことは、諦めてもらう。対話によって、少しずつ、お互いにとって一番いい場所を求めていくために必要になるのが、合理的配慮のための対話ということになります。
でもこれって、もしかしたら、本当なら、もっと当たり前にいろんな場所で行われるべきことなのかな、と考えたりします。実際、この本のタイトルのどこにも、障害者という文字は見当たりません。
と同時に、起こり得る様々な難しさについても、本の中で議論されています。それでもあきらめてはいけないのだろうな、と思いました。


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