織田友理子「LOVE&SDGs 車いすでもあきらめない社会をつくる」
我が家は時々旅行に行きます。まあ、普通の家族旅行ですが、少し特別なことをします。まず部屋に着いたら、知的障がいのある長男がいたずらしそうなものはないか、見回して確認することです。
茶器やおしゃれな飾りなどがあれば、手の届かないところに隠します。
隠す場所がない時はフロントにお願いして、片付けてもらいます。
部屋のテレビはつけなかった時期もありました。自宅ですがモニターを壊したことがあったからです。最近は大丈夫ですけど。
あとは、夜中に起き出さないことを祈ります。
帰るときには原状回復します。
大変だけど、本人も楽しそうだし、行ける時には行きます。
なので、あきらめない、というところに、共感しました。
でも、車いすなら「あきらめない」というほど大変ではないのではないかな、と思ったことを少々恥ずかしく思います。織田さんご自身は車いすユーザーというだけでなく難病も抱えています。なので、自分で車を運転して、車椅子を自走して色々と外出する方とは違うとは思います。でもそういう意味ではなく、まだまだバリアフリーは進んでいないと分かりました。
例えば電車など、車椅子用スペースのある車両もあり、なかなか進んでいると思っていました。しかしホームから電車までフラットに乗れない場合は、駅員に事前に連絡しなければいけません。確かにスロープを持った駅員が待機して、着いた電車から車椅子の乗客が降りてくるのを見かけたことはあります。しばらく前までは新幹線の車椅子席はわずかにしかなくて、友達と一緒に行くことはできず、別の新幹線を利用し、現地で待ち合わせということもあったそうです。
そもそもふらっと行けないということがどれだけ大変か、ストレスになるか、考えてみたこともありませんでした。
織田さんは、お子さんを連れて車椅子で海に入れるバリアフリーの海岸に出かけてから、youtubeで発信することを思いつきました。
そして、WheeLogという、車椅子でのおでかけに必要な情報をみんなで登録できるアプリを開発しました。
車椅子ユーザーにしか分からないこともあるだろうし、そして何より、これを見てもっと出かけようと思うユーザーが増えると思います。
情報リクエストもできるから、まだ載っていなかったとしても、訊いてみようとなります。誰かが協力してくれたら、自分の行きたいところの状況を自宅にいながら知ることができます。さらにその情報提供の協力を歩行者がしたとしたら、ユーザーがどんなことに気を使うのか気付けるようになります。
合理的配慮の意識が浸透する、すごい仕掛けだと思います。私もダウンロードしてみたので、地元の情報を見てみようと思います。
本は織田さんが大学生になってからの経緯が前半漫画で描かれています。ご主人との出会いや体調の異常を感じて遠位型ミオパチーと診断されたこと、また結婚して子どもを出産したこと、子育てについて。
一見すると数奇な運命の物語のような気もしたけれど、一つ一つのことを、自分がどうしたいか、について丁寧に考え、決めたことで、積み重ねられたのだと感じました。あきらめない、とは、まず、自分がどうしたいか、を大切にすることなのだと気付きました。
障がいのある人はこんな感じ、車椅子の人はここまでしか行けない、遠位型ミオパチーの人はこんな毎日を送っている、そんな情報を耳にすると、自分もそうなんだと決めつけて、自分の気持ちを考えるのをやめてしまうのかもしれません。それがあきらめるということで、あきらめない、は、その逆。ちゃんと自分のやりたいことに向き合って、そこから、そのためにどうするかを考えることから始まるのだろうなと理解しました。
我が家も色々とチャレンジしていこうと思います。