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『べらぼう』第8回 感想文
第8回の『べらぼう』は、なんといっても
バーカ、バーカ、バーカ!豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ!(by九郎助稲荷)
の回でした。
蔦重の作った吉原細見「籬の花」は、五代目瀬川襲名のおかげで売れに売れ、吉原に活気が戻ります。
ところが吉原が活気づくごとに、ご女郎たちの負担は大きくなるばかり。
蔦重のためにと五代目瀬川の名跡を襲名した花の井はもちろんのこと、瀬川がさばききれないお客を相手する他の女郎たちも身が持たない。
蔦重は源内さんに訪ねます。
「ご女郎が、一番幸せになる道は何なんでしょう?」
源内さんはいいます。
「そりゃあ、いいところに見受けされることじゃねえか?」
「いっそ、おめえさんが瀬川を見受けしてやりゃあいい」
源内さんは花の井の、蔦重への恋心に気づいています。
「おめえさんは女に興味はないのかい?」
蔦重はいいます。
「吉原モンは、その手のこころね、抜かれんっすよ」
花の井の気持ちに全く気付かぬ蔦重。
「バーカ、バーカ、バーカ」
一方、松葉屋の瀬川(花の井)の元には客として鳥山検校が訪れます。
市原隼人の鳥山検校、セクシー過ぎる!
オーラが強すぎる!
「鳥山検校」といえば嫌われもんの高利貸しのイメージだったのに、なんだこれは…。
高貴なたたずまいでもって、微かな音と空気感で周囲の変化を感じ取り、「座っているだけではヒマでしょう」と、みやげに本や双六を持参して、「幸い私は盲(めしい)。気にせず自由にお過ごしなさい」というのです。
なんとカッコいい。
今回出てきたその他大勢のしょうもない客たちとは「人間としての格」が違うではないですか。
そんでもって蔦重。
「花の井」が幸せになるには、いいところに見受けされるのが一番なのだと思い込みます。
須原屋さんに「ご女郎に送りたい本があるんでさぁ」というからなんだと思ったら。
そうか、『女重宝記』。
江戸時代に編纂された女性用の教訓書。全5巻。
一之巻は嗜み、二の巻は祝言、三の巻は懐妊、四之巻は諸芸、五の巻は雑学。
蔦重、花の井の胸の内も知らず、「見受けされて困らねえようにな」と、風呂敷包みの5巻をドンと手渡すのでした。
花の井の悲しげな顔
「重三にとって、わっちは女郎なんだね」
バーカ、バーカ、バーカ!豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ!(by 九郎助稲荷)
鱗形屋の『金々先生栄花夢』出版の話やら、
市中の地本問屋と吉原の忘八のにらみあいの話やら、
田沼意次と源内さんの画策の話やらもありましたが、
今回は、セクシーな鳥山検校と、バーカ、バーカ、バーカな蔦重と、かわいそうすぎる五代目瀬川に私のこころは持っていかれましたな。
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