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【本の紹介】『本の読み方 スロー・リーディングの実践(平野 啓一郎 著)』

本を読むのが楽しみになる本をご紹介します。

『本の読み方 スロー・リーディングの実践(平野 啓一郎)』

平野啓一郎さんは、1975年生まれ。京都大学在学中に芥川賞を受賞して話題になっていた方です。


高校生のみなさんにこの本をすすめたい

高等学校では、2022年からスタートした新学習指導要領に則って「国語」で小説を読む時間が極端に減ってしまいました。
私はとても残念に思っています。

平野さんはこう言います。

本当の読書は、単に表面的な知識で人を飾りたてるものではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さとをもたらし、人間性に深みを与えるものである。

高校の国語教員だったとき、まさに平野さんが書かれていることを実現するために授業をしていました。
特に小説を教材にするときは熱が入ったものです。
しかし、今はできません。
高校生のみなさんは、自学自習する必要があります。

そこでこの本の出番です。

第1部 基礎編「量から質への転換を」

平野さんは、速読とスロー・リーディングの違いについて、次のように表現しています。(大雑把にまとめています)

海外で見知らぬ土地を訪れるとして

【速読】→空き時間のほんの1・2時間でザッと見て回る感じ

【スロー・リーディング】→1週間滞在して地図を片手に丹念に歩いて回る感じ

 ⇒理解の深さや印象の強さ、得られた知識の量には大きな違いがある

私も若い頃は「たくさん本を読んだらカッコいい」と思って手当たり次第に本を手に取り、文字を追っていました。
けれども今、「好きな本について教えて」と言われても何も語れません。
もったいない読み方をしていたと思います。

第2部 テクニック編

第2部にはおおまかに5つのテクニックが書いてあります。
それらを意識して読むことが習慣になれば、読解力が上がるだけでなく人生も豊かになるはずです。

特に、今まで意識してこなかった中高生のみなさんは是非取り組んでみてください。

1 助詞、助動詞に注意する

助詞、助動詞の大切さについて、次の例で説明されています。

「私はリンゴが好きである。」という文章と、「私はリンゴが好きではある。」という文章とでは、ニュアンスに差がある。

2 辞書を引く癖をつける

「語彙を増やすこと」はやはり絶対必要!

3「自由な誤読を楽しみつつ」「作者の意図を考える」という作業を同時に行う

なぜそのような作業が必要なのかということについて以下のような表現があります。

本を読む喜びの一つは、他者と出会うことである。
自分と異なる意見に耳を傾け、自分の考えをより柔軟にする。

4 立ち止まって「どうして?」と考えてみることが大切

その先に進まずに前に戻ってもいい。
その本を置いてもいい。
その時にわからなくてもいつか突然答えが浮かぶかもしれない。
立ち止まらなければ、せっかくのその問いは頭に残ることすらない。

5 「より先に」ではなくて「より奥に」

ある作家のある一つの作品の背後には、さらに途方もなく広大な言葉の世界が広がっている。
(中略)
一冊の本をじっくりと時間をかけて読めば、実は、十冊分、二十冊分の本を読んだのと同じ手ごたえが得られる。

第3部 実践編

この本の中で個人的に一番面白かったのは第3部です。

第2部のテクニック編で勉強したことをもとに、実際の文章を使ってスローリーディングを実践します。

『こころ(夏目漱石)』『高瀬舟(森鴎外)』『伊豆の踊子(川端康成)』など昔の教科書にも出てきたおなじみの作品が例文に上がっています。

中でも私が最も興味をひかれたのが『橋(カフカ)』を使って、「自由な誤読を楽しみながら作者の意図を考える」練習です。

ご紹介するにあたって他の文献なども探していたらなんと!
noterのよじろーさまが素晴らしい記事を掲載してくださっているではないですか!
すみません、勝手ですがご紹介させてください。
『橋』のよじろーさまによる訳文、解釈、伝記から読むとどう読めるか等についても書いていらっしゃいます。

よじろーさまの訳文を参考に、あらすじだけ書かせていただきますと、

人の来ない、まだ地図にも記されていない「険しい高地」に、「私」は冷たく硬直して橋として架かっている。

こちらの端につま先を、向こうの端に両手を突き立てて、ボロボロ崩れていく土にしがみついていた。
誰かがやってきて渡ってくれるのを待っている。
一度かけられたら最後、落下することなしには橋はどこまでも橋でしかない。


やっと「一人の男性」がやってくる。
橋は自分の役目をしっかり果たそうとする。
渡る人がよろけたらなんとか助けてあげようと思う。


しかし、男性が「体の真ん中に跳びのってきた」ために、「激しい痛み」に襲われる。
自分の上にのった人が誰なのかを見ようとして身をひねった途端に橋は崩落する。
のっていた男性も落ちたのだろう。


「私」は、こなごなに砕け、尖った岩によって、突き刺された。

いろんな読み方ができそうでしょう?

もしこんな夢を見たとしたらどんな風に分析するか、と考えてみると面白いかもしれません。

さあ、次は何の本を読みましょうかね😊



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