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とびきり自由なあの頃の児童書、『クレヨン王国』を再読して

同世代のママ友が「最近、子どもの頃に読んでいた『ズッコケ3人組』を図書館で1冊ずつ借りて読んでいる」と話していた。気軽に読めて、習い事の待ち時間や移動時など細切れになりがちな主婦の読書にぴったりなのだという。文庫版だと持ち歩きやすいし。

記憶になさすぎて初見の気持ちで読めつつも、「あれ? やっぱりなんか覚えてるかも…?」と脳内回路が刺激される感覚を味わえる再読体験。さっそく真似してみようと思った私の頭に浮かんだのが「集英社コバルト文庫」の「放課後シリーズ」。「放課後の○○」(○○には歴史上の人物や、著名な作品の登場人物が入る)のタイトルで、高校生カップルが探偵さながら、○○にちなんだ殺人事件を解決していく、というようなシリーズである(うろ覚え)。

実際には「講談社ティーンズハート(X文庫)」のほうが激ハマりしていたのだが、当時から図書館にはあまりなかった記憶があって。その点、若干硬めイメージの「コバルト文庫」のほうならあるのでは?と思ったのだが…区内の図書館には在架なし。あの頃の子どもが夢中になったシリーズが新しい読者に届くことはないんだと思うと少し悲しい。Amazonの中古書店ではチラホラ売られているが、私のような懐古厨が気まぐれに読むだけだろう。

一方、今様の装丁にリニューアルし、読み継がれていく作品もある。たとえば、図書館の児童書コーナーでたまたま見つけた「クレヨン王国シリーズ」。記憶の中にある当時のメルヘンチックなイラストから一変、クレヨン要素すらほぼなくなっている表紙に驚きつつも、さっそく借りて読んでみた。

あれ? クレヨンはどこ行った…?


読んでみてびっくりした。「こんなに自由なのか」と。クレヨンだけでなく、虫も花も動物もしゃべる。月へ行き、劇場で歌い踊り、人形の町へ行き…いろんなキャラクターが次から次へと登場。脈絡なく自由に突き進んでいくお話についていけず、実を言うと途中でギブアップしてしまった。

そして、「かつての私はこのお話をワクワクして読めていたんだな」と思うとうらやましく感じた。「オチは?」「展開は?」「これは伏線なのか?」「辻褄が合ってなくない?」なんて考えずに、ただただ物語を楽しむ体験。これって、ある程度自分で本が読めるようになって、でも深読みはせず無邪気に受け取れる、小学校2~4年生頃の子どもにしかできないことなのかもしれない。

ちなみに、私が借りた図書館の本はピカピカだった。あまり読まれていないのだろうか。子どもには、小さいうちに「何かを得ようとする」読書ではなく、「ただのワクワクを感じる」読書を体験しておいてほしいけど、今は「何かを得ようとする」本が低学年向けから揃っているので、勧め方がなかなか難しい。

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