書籍レビュー『一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』岩田徹(2021)本をこよなく愛す店主が選ぶあなただけの本
【約900字/2.5分で読めます】
著者は北海道の「いわた書店」の店主
店主の岩田徹氏は、'90年に親からお店を引き継ぎ、出版界の不況の荒波を乗り越えました。
こう書くと、簡単に聞こえますが、本書でも書かれているように、その経営は苦しいもので、何度、店を畳もうと思ったかわからないほどだったそうです。
そんな中、学生時代の先輩から舞い込んだ「この1万円で適当に本を見繕ってくれ」という依頼がヒントになって、現在の「一万円選書」がはじまりました。
「一万円選書」とは
希望者に「選書カルテ」と称して、アンケートに答えてもらい、その内容を読んだ店主が、その人に合わせた1万円分の本を選ぶサービスです。
大体、10冊程度の本が選ばれるそうですが、このお店では手数料などはとらずに、純粋に本の金額と送料のみで、このサービスを続けています。
最初こそ、なかなか浸透しなかったサービスですが、テレビで取り上げられたのをきっかけに話題となり、今では常に予約待ち(3000人待ち)なんだそうです。
営業日には15~17時に店を閉めて
店主が毎日のように選書
それでも追いつかないほどの盛況ぶりを見せています。
しかし、ここにくるまでの道のりは決して平坦なものではなく、店主が60代後半になってから、このサービスがヒットしたんですよね。
こういう話を聴くと、つくづく人生というのは、どこにチャンスが転がっているかわからないものだと思います。
店主は本が好きで好きでたまらない人で、そこにくるお客さんもまた本が好きな人です。
もちろん、仕事ですから、大変なことも多いと思います。
それでも好きなものに囲まれて、それを求める人に勧めることができて、それが商売になるなんて、こんなにステキなことはないのではないでしょうか。
すべての仕事がこうであれば、もっと社会は穏やかになる気がします。
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