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読書感想文にオススメの本(3)ー中学生編ー
※4000字以上の記事です。
お時間のある時に
お付き合いいただけると嬉しいです。
一応、「読書感想文」という名目なので、学校に提出しても恥ずかしくない本を選んだつもりです。
なので、このリストに挙げた本はいずれもおもしろい作品ではあるものの、「エンタメ性が高過ぎないもの」を中心にピックアップしています。
※それぞれの「読書レベル」も付けていますが、あくまでも私の主観による「客観」です。★が多いほど、難しい表現が多かったり、ページ数が多かったり、読破が難しいと思われる本です。
※それぞれの本に「感想文のヒント」を付けています。感想文を書く際に参考にしてみてください。
①『椿山課長の七日間』浅田次郎
発行年:2002年/出版社:朝日新聞社ほか/416ページ(朝日文庫版)
読書レベル★★★
46歳で急死した主人公が、7日間だけ他人の身体を借りて、現世に戻る話です。天国の描写、そこで主人公が受け取る「七つ道具」など、全体的にマンガようなおもしろさがあります。
単純におもしろい話としても読めますが、「自分が死んで、7日間だけ現世に戻れたら」と想像する教材にもなるでしょう。
感想文のヒント
自分が死んで、7日間だけ戻ってこれるとしたら、あなたは何をしますか。
②『夏への扉』ロバート・A・ハインライン
発行年:1956年/出版社:早川書房/416ページ
読書レベル★★★
コールドスリープ(冷凍睡眠)やタイムスリップを題材にした SF 小説です。この作品が書かれたのは、60年以上も前ですが、作中には今のハイテク技術に通じるようなマシンやロボットがいろいろと出てきます。
この作家に限らず、SF 作家というのは、昔から最先端の技術についてよく知っているんですよね。
だからこそ、半世紀以上も経ってから、実現するようなアイディアを作品の中で登場させることができるんですね。SF 小説からは、お話のおもしろさだけでなく、未来を見通すようなものの見方も学ぶことができます。
感想文のヒント
エンタメ寄りの作品なので、純粋に物語のおもしろさを綴っても、立派な感想文になりそうです。
また、作中に登場した未来的なアイテムが、現代で言うと、どんなものにあたるかを考えてみるのも、おもしろいかもしれません。
③『変身』フランツ・カフカ
発行年:1915年/出版社:新潮社ほか/121ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★
この作品は、私が中学生の頃、学校の先生に教えてもらって読んだ本です。
主人公がある朝、目を覚ますと巨大な虫になっていた、という不思議な設定の物語になっています。
なぜ、彼が虫になっていたのか、作中で明かされることはありません。彼が巨大な虫になり、主人公や家族はそれに対して、どういう反応をしていくかが淡々と描かれていきます。
このような不条理な設定の物語は、「不条理文学」とも言われます。現実離れしたフィクションではありますが、一歩踏み込んで、作者の意図を考えるのもおもしろいですね。
感想文のヒント
あなたがこの作品を読んで何を感じたかを書くのと同時に、作者が本作で伝えたかったことも想像してみましょう。そうすれば、一味違った感想文が書けるはずです。
④『杜子春』芥川龍之介
発行年:1920年/出版社:新潮社ほか/336ページ(角川文庫版、他作品も含む)
読書レベル★★★
『杜子春』も私が中学生の頃に読んだ本です。芥川龍之介は、国語の教科書でも作品が取り上げられることが多いので、一つくらいは読んだことはないでしょうか。『羅生門』や『鼻』が有名ですが、私が推したいのは本作です。
貧しい青年である主人公・杜子春が、とある老人に黄金のありかを教えてもらい、大金を手にします。そうすると、これまで疎遠だった友人たちが、杜子春のもとにたくさんやってきて、仲良くなります。
ところが大金を使い果たしてしまうと、再び杜子春の周りには、人がいなくなりました。すると、再び老人がやってきて、大金のありかを教えてくれます。またしても、杜子春のもとに友人たちが集まり、お金が尽きると去っていきました。
こうして、二度同じことを繰り返した杜子春ですが、三度目に老人が現れた時に、杜子春は老人の正体が「仙人」であることを見破ります。そして、杜子春はこの仙人に弟子入りすることになります。果たして、仙人に弟子入りした杜子春は、彼から何を学ぶのでしょうね。
感想文のヒント
この作品は芥川龍之介が中国に伝わる伝奇小説を童話化した作品でもあるんですよね。「童話」と考えると、このお話に何か「教訓」めいたものも見出せそうですよね。それは一体、どんな教訓でしょうか。
⑤『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ
発行年:1906年/出版社:新潮社ほか/246ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★★
神学校(エリート養成学校)に通う主人公の苦悩を描いた小説です。
暗くてなかなか辛い物語ではありますが、不思議と読み心地は悪くありません。むしろ、ヘルマン・ヘッセによる文学的な味わいの濃い文体に、なんとも言えない魅力が感じられます。
ちなみに、この作品はヘッセの実体験がモチーフになっているとも言われており、自身のリアルな体験が、本作の生々しい描写の源泉になっているのは間違いないでしょう。
感想文のヒント
こういったタイプの作品は、普通のエンタメ的な作品とは違って、どういった描写が印象に残ったかを書いていくと、作品の本質に近づくことができるでしょう。また、同じ学生の立場として、主人公の苦悩に共感できる部分もないでしょうか。
⑥『さぶ』山本周五郎
発行年:1963年/出版社:新潮社ほか/496ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★
経師屋(※1)で丁稚奉公(※2)をしている、さぶと栄二が主人公の物語。
(※1:きょうじや。屏風や書画を手掛ける職人)
(※2:でっちぼうこう。年少者が一定期間、職人のもとで雑役などの奉公をすること)
タイトルは「さぶ」ですが、出番が多いのは栄二の方で、実質的な主人公です。さぶは、不器用でおとなしい性格、栄二は、何をやらせも器用で、勝気な性格、対照的な性質の二人ですが、兄弟のように育ってきました。
ところが、ある時、栄二に濡れ衣の罪が着せられて、人足寄場(にんそくよせば。収容所)に送られてしまいます。人足寄場の描写が壮絶な本作ですが、そこで栄二はさまざまなことを学んでいくのです。
感想文のヒント
舞台設定が江戸時代の本作ですが、その文章表現は非常に現代的で、現代を舞台にした小説とも、それほど読み応えに違いはありません。二人の熱い友情も印象的ですが、どのような描写がされているかにも注目してみましょう。
⑦『旅のラゴス』筒井康隆
発行年:1986年/出版社:徳間書店ほか/272ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★
架空の世界を舞台にしたファンタジーです。「先祖の書物を読破する」ために、旅をする主人公・ラゴスの24歳~68歳までの物語が描かれています。
高度な文明を持っていた人類が、それを捨てて、原始的な生活に戻り、超能力を手にしたという設定です。
剣を持って戦ったりするわけではありませんが、テレビゲームの RPG のような世界観なので、マンガやゲームに近いものを感じるかもしれません。
しかし、終盤に出てくるお話は、かなり壮大で圧倒されるでしょうね。
感想文のヒント
連作短編なので、どれか気に入ったエピソードについて書くのもいいでしょう。ラゴスが最後に辿り着く目的地での体験は、かなり壮大です。
人類の歴史について、考えるきっかけにもなります。
⑧『ブレイブ・ストーリー』宮部みゆき
発行年:2003年/出版社:角川書店/512ページ(上巻)、528ページ(中巻)、544ページ(下巻)
読書レベル★★★★
これも冒険もののファンタジー小説です。先ほど紹介した『ラゴスの旅人』に比べると、さらにゲームっぽい感じがするお話になっています。
主人公のワタルは、RPG が大好きな小学5年生のごく平凡な男の子です。
しかし、彼には大きな悩みがありました。お父さんがお母さんに対して、一方的に「離婚」を切り出して、家を出て行ってしまったのです。
そんな時に、ワタルが見つけたのが、幽霊が出ると噂の「幽霊ビル」でした。そこは見たこともないような異世界「幻界(ヴィジョン)」への扉だったのです。運命を変えるために、ワタルはヴィジョンへと旅立ちました。
感想文のヒント
全3巻と非常に長い本なので、印象に残ったシーンをいくつか取り上げると、感想が書きやすいかもしれません。
また、ゲームのようなファンタジーの世界観だけでなく、現実世界でワタルに突き付けられた問題の深刻さについても、あなたの考えを述べると、より感想文らしい作文になると思います。
⑨『ボクの音楽武者修行』小澤征爾
発行年:1980年/出版社:新潮社/244ページ
読書レベル★★★
日本を代表する指揮者・小澤征爾さんが、1959年、24歳の頃に、はじめてヨーロッパに行った時の体験を綴ったエッセイです。
小澤さんがはじめて海外に行った頃は、誰もが海外に行ける今のような時代とは違って、海外に行ける人の数には限りがありました。特別に認められた人だけが海外に出ることを許されたのです。
そういう時代に、言葉も文化も違う異国で小澤さんがどのようにして、成功したのか、当時の空気感も含めて伝えてくれています。エッセイとして綴った文だけではなく、当時、小澤さんが家族にあてて書いた手紙も織り込まれていて、リアルな体験が伝わってきます。
感想文のヒント
この本を読むだけでなく、同時に小澤征爾さんが指揮をする音楽も聴いて、その感想も書いてみてください。読書+実体験がともなった感想文は説得力が違います。
⑩『繰り返し読みたい日本の名詩一〇〇』彩図社文芸部(編纂)
発行年:2010年/出版社:彩図社/224ページ
読書レベル★★★
日本を代表するような100篇の詩が収められた本です。
私が詩の世界に親しむようになったのは、かなり遅い方で、この本を読んだのは、1年ほど前のことです。
詩は他の文学に比べて、文字が少なくて読みやすい印象を持つかもしれませんが、これほど奥が深く、難しいものもない気がします。一つひとつの言葉を嚙みしめるように味わってください。
感想文のヒント
詩に親しむには、先入観を捨てて、そこにあるものを、あるがままに受け入れることです。そこに綴られた言葉から、あなたが何を感じるのか、素直な気持ちで書いてみるといいでしょう。
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