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映画レビュー『ベン・ハー』(1959)古代ローマの圧倒的なスケールを堪能
【約2300字/6分で読めます】
【こんな人にオススメ】
・歴史が好き
・ローマが好き
・人生に悩んでいる
【こんな時にオススメ】
・ワクワクしたい
・歴史のロマンに浸りたい
・たっぷり時間がある
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十年くらい前のことだったか
先日お亡くなりになったキャスターの小倉智昭さんが『とくダネ!』で、映画の話になった時の発言を覚えています。
「若い頃に『ベン・ハー』を観たから、あの作品に比べたら、どんな作品を観ても驚かない」というようなことをおっしゃっていたんですよね(細かい言い回しはうろ覚え)。
私自身ももちろん、『ベン・ハー』のタイトルは知っていました。
いつか観なければならない作品とは思っていましたが、ここまでのことを言わせる作品って、どんなにすごいんだろうと感じたんですよね。
なんだったら、「小倉さん、言い過ぎじゃね?」くらいに思っていました。
古い作品なので、少なからず「思い出補正」もあるのではないかと、タカをくくっていたんですね。
最近、読んだ本で、レビューでも紹介した『古代オリンピック』にも、やはり『ベン・ハー』の名前が出ていました。
古代オリンピックの種目には、馬を使った戦車の競争や競馬もあったんですよね。
『ベン・ハー』は、オリンピックの話ではありませんが、本作の中にも戦車で競争するシーンがあって、その辺の描写が『古代オリンピック』でも引用されていたわけなんです。
「これは今、観るしかない!」と意気込んで、鑑賞してみました。
観る前にひるんだのは上映時間の長さ
再生前のプレビュー画面(配信で視聴)には「212分」と記載されていました。
「212分!?……3時間半もあるの!?」
「いやいや、ここでひるんではいけない。こんなにたっぷり時間があるのは、この年末年始しかないのだから」と自分に言い聞かせて、再生したのでした。
再生すると、最初に出てくるのは「OVERTURE(序曲)」というテロップとともに、バックには神話をモチーフにしたと思われる絵画があしらわれています(ミケランジェロの『アダムの創造』)。
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(Wikipedia より引用)
画面に特に動きもなく、6分ほど演奏が続きます。
「いやいや、こういうのを削れば、もうちょっと短くなるんじゃないの?」
この時点でも、私は本作をあなどっていました。
しかし、本編がはじまって私は、本作の「舞台っぽい」匂いを嗅ぎとったんですよね。
調べてみると、オペラではこのような序曲が演奏されるのが通例らしいのです。
3時間半もある作品なので、中盤で一度「休憩タイム」も挟まれるのですが、その時にも「序曲」と同じように、『アダムの創造』が出てきます(ちなみに、『七人の侍』〈207分〉でも同じように休憩時間が挟まれる)。
つまり、この絵画とテロップの演出は、舞台における「幕」なんです。
この意味がわかった時、私の見方はなんて浅はかだったのだろうと、さっきまでの自分を戒めました。
全然本編の話ができていませんが
とにかくボリューム満点の作品なので、どこを取り上げるべきか、難しいところです(もう半分諦めている)。
舞台は1世紀のローマとイスラエルです。
最初の説明で「キリストが生まれた」と出てくるので、西暦がはじまった年だというのは、誰もが気が付くでしょう。
当時のローマは勢力を拡大し、圧倒的な武力で他国を制圧していました。
主人公はイスラエルに住むユダヤ貴族、ジュダ・ベン・ハーです。
この土地にもローマ軍が来ていました。
その中に、ジュダの旧友・メッサラがいます。
メッサラは幼い頃にジュダと一緒に育ちましたが、メッサラはローマ人だったので、ローマ軍に入り、今では軍の要職に就いていました。
メッサラは、ジュダにローマ軍への協力を依頼しました。
しかし、ジュダは同胞(ユダヤ人)を裏切ることはできないと言って、これを断ります。
ローマ軍からの新しい総督がやってきた日、ジュダは妹とともに、建物の上からこの行列を見物していました。
妹の触れた屋根の瓦が崩れてしまい、その行列の上にこれが落ちたのです。
兵士が一人ケガをしました。
瓦が落ちてきた方向を見て、兵士たちはジュダを暗殺の容疑で連行します。
その場には、旧友のメッサラがいたので、ジュダは助けを求めるのですが、メッサラは拒否しました。
こうして、ジュダ一家(母、妹)は牢屋に入れられ、ジュダはガレー船(奴隷船)送りとなるのでした。
ここまでが序盤のお話ですね。
とても長い話なので、全部を紹介することはできないのですが、とにかくストーリーがはじまると、物語がとても魅力的で、あっという間に夢中になってしまいました。
「212分」にひるんだ自分を笑いたくなってしまうくらい、あっという間の3時間半でした。
冒頭に紹介した小倉さんの感想も、全然間違っていなかったです。
60年以上前の作品にもかかわらず、この圧倒的なスケールの世界観を無理なく表現しています。
いや、ドローンも CG もなかったからこその、この映像の迫力なのでしょう。
「このシーンはどうやって撮ったんだ!?」と、驚嘆させられるシーンが多かったですね。
お正月休みで、時間のある時にこそ、このような超大作がオススメです。
(書きたいことが全然書けていないので、別の記事に改めます)
【作品情報】
1959年公開(日本公開1960年)
監督:ウィリアム・ワイラー
脚本:カール・ダンバーグ、マクスウェル・アンダーソン、クリストファー・フライ、ゴア・ヴィダル、S・N・バーマン
原作:ルー・ウォーレス
出演:チャールトン・ヘストン、スティーヴン・ボイド、ハイヤ・ハラリート
配給:MGM/ロウズ・シネプレックス・エンターテインメント、ワーナー・ブラザース
上映時間:212分
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