見出し画像

人生100年時代。子供に必要なのは、良いところを伸ばす教育か。弱点をなくす教育か? (続編)

前回は、子供をスペシャリストとして育てることの可能性について書かせて頂きました。今回は私の暮らすカナダで経験したことも踏まえ、これからの「理想の教育」について、書いて行きたいと思います。

どんな教育方法で、子供をスペシャリストに育てるのか

わたしが暮らすカナダでは、子供が小学生など低学年のうちは、子供の強みを育てる、というよりも、基礎教養を積むため、日本と同様に国語や数学から体育に音楽の授業まで、広く授業が行われています。

ただ、授業とは別に、自己肯定感を高め、子供の個性や強みを伸ばしている方法の一例としてCharacter Assemblyがあります。

Character Assemblyとは生徒の性格や個性の良いところを学期ごとに、全校生徒の前で評価する集まりです。子供を表彰する項目は、Fairness, Caring, Respect, Responsibilityなど複数にわたり、必ず、ではありませんが、多くの生徒が卒業までに、何らかの賞をもらいます。当日は親も体育館に集まり、先生に名前を呼ばれた生徒が登壇。誇らしげに賞状をもらい、記念撮影。その写真や表彰状を、自宅に持ち帰り、部屋の目立つところに飾ることで、子供のモチベーションが上がり、家族としても自慢の子供となります。この仕組みのポイントとしては、誰かと順位を競って獲得する訳ではなく、本人の努力であったり個性を評価しているところにある。自分を受け入れてくれている、自分は常に見守られている、という感じが、自信に繋がっている。

また、もう少し学年が進み、中学生や高校生になれば、卓越した分野があれば、公立でも音楽や数学、コンピューターを深く勉強する専門の学校があるので、そこで子供の適正や能力に見合った教育を受けることができます。

未来を見据えた新たな授業の必要性

先般、トロントでベンチャー企業の支援を行なっている団体MarSでAIプラットフォームのビジネスを行なっているMichael Priddis氏の講演を聞いた際に、Priddis氏が「現在の高校や大学の教育内容では、時代の変化のスピードに全く追いついていない。教育こそ、これから先に起こり得ることを見越して、毎年、シラバス(授業計画)を大胆に更新していく必要がある」と言っており、大変強く共感しました。単純に過去の事実を記憶したり、手っ取り早く知識を得るだけであれば、ネットで検索をした方が早く、そして広く知ることができます。これからの時代の必要なことは、『子供に授けたい「イキヌキリョク」とは?』でも書いた5つのチカラを見越して、国が先導をとり、未来を生き抜ける子供たちになるような授業や体験を促していくことが必要だと思います。

これからの教育には、学校すらいらない?

人生100年時代をイキヌク子供を育てるもっと先進的な事例としてはMITメディアラボの所長 伊藤丈一氏が著書「教養としてのテクノロジー」内で「アンスクーリング(Unschooling)」というムーブメントを紹介しています。少し長くなりますが、引用します。

“アメリカで起こりつつある「アンスクーリング(Unschooling)」という新たなムーブメントを紹介します。これは、いままでの「教育」に代わる「子どもの育て方」を実践する活動です。アンスクーリングは、日本語に訳せば「非学校教育」という意味になるでしょうか。その名の通り、学校教育に頼らず、学校そのものが一切存在しないかのように子どもを育てるのが「アンスクーラー(Unschooler)」と呼ばれるコミュニティです。
“アンスクーリングには、「セルフディレクテット・ラーニング(自発的な学習)」という哲学があります。その哲学のもと、子どもが何を学びたいかをすべて自分で決めて、どのように学ぶかも決めます。すべて自分で決めるというアイデアです。どこに情報があるのか、どこを探せばいいのか、どれがいちばん良い答えなのかなど、親が「答え」を子どもに示すのはかんたんです。でも、アンスクーラーは決して「答え」を教えません。子どもたちには、高い自主性が求められるのです。”
アンスクーリングでは、何を大人に手伝って欲しいのか、子供たちから自分で言わせることが大切だと考えています。「何が教育的か」「何が教育的ではないか」という定義そのものをなくして、評価のない自由に中で、子供が自分の行動を通して成長するスタイルです。
“日本では「モンテッソーリ教育」や「シュタイナー教育」が比較的に知られているようですが、それらとアンスクーリングとの違いは、子どもの「自由な領域」が事前に定義されているかどうかにあります。アンスクーリングは、どこまでが自由な領域かの定義はありません”

私が感じるに、このアンスクーリングの一番のキーは、「自分の好きを伸ばす。伸ばす方法を習得する」ということに尽きると思います。冒頭にも書きましたが、これからの時代、記憶や情報整理など、AIが得意とすることはコンピューターに任せ、人間にしかできない、もっと言えば、その人しかできない、ことが価値を持つことは間違いありません。「何でも得意な子供になってほしい」と願う親の気持ちが、子供を褒めることよりも、ダメなところ注意する方向に行くことも多いかもしれません。でも、自分.の好きなことや得意なことを極めて、人生を全うする。そんな素敵な生き方を我が子にしてもらえたら最高だと思いませんか?

おまけ情報:「海外で暮らす父親が発信!子供に授けたい教育」をテーマに、世界ナンバー1とも言われるカナダの教育について「イキヌキリョク」というサイトで書いています。よろしければ、ご覧下さいませ。リンク:イキヌキリョク


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?