マーケティング理論のThe教科書of教科書、有斐閣アルマ『マーケティング戦略〈第6版〉』をテキストとした全14回の理論学習プログラムの提供を開始します(無料です!!)
ついに夢のひとつが叶いました!
何をするのか
掲題の通り、マーケティング理論のThe教科書of教科書『マーケティング戦略〈第6版〉』(有斐閣アルマ)をテキストとした全14回の理論学習プログラムの提供を開始します。しかもMARPSだから無料! 講師は不肖ワタクシ池田が務めます。
本書は、実務家マーケターや大学生が体系的なマーケティング理論を学ぶ一冊として高い評判と信頼を獲得してきたまさに定番中の定番の書です(初版は1996年4月)。
MARPSはこのたび、本書の出版元である有斐閣(ゆうひかく)さんおよび著者である和田 充夫 先生(慶應義塾大学名誉教授)、恩藏 直人 先生(早稲田大学教授)、三浦 俊彦 先生(中央大学教授)の了承を得て、本書をテキストとした理論学習プログラムの提供を開始できる運びとなりました。
僕はいつか(それこそ20年くらい前から)本書をテキストとした理論学習プログラムを提供したいと思い続けてきました。真正面から今回の取り組みをご相談し、「良い取り組みですね」とご快諾いただいた有斐閣および著者の先生方には感謝してもしきれません。必ず受講生の役に立つものにすることをお約束します。
なぜやるのか
さて、なぜいま理論学習をすべきなのか。
スマホとSNSと動画の普及によって、マーケターの学習は急速に断片化が進んでいます。30秒〜1分程度の短尺動画、10〜20分のYouTube動画、著名マーケターの音声コンテンツ、有名メディアの事例記事。
いつでも、どこでも、誰でも、無料で、気軽にマーケティングを学ぶことができる選択肢が増えたことは歓迎すべきことですが、僕は行き過ぎたタイパ思考と、その ”消費者ニーズ” に対応すべく幾何級数的に増加を続ける断片化されたマーケティング学習コンテンツに強い危機感を感じてきました。
マーケティングの目的はお客様に買っていただくことです。そのためには、人間の営みを科学し、再現性を高めなければなりません。だから(人間科学である)マーケティングは心理学、社会心理学、認知心理学、行動経済学などの周辺領域とも広く深い接点を持ちます。
また、マーケティングは人間科学としての領域だけでなく、企業が「どこで戦うか(=戦略)」「どう戦うか(=戦術)」を考えたり、資材の購買・製造・物流・アフターサービスとどう連携するか(=バリューチェーン)を最適化する経営管理としての視点も提供してくれます。
この(凄まじく)領域が広く、一つひとつの奥が深いマーケティングを、断片化された3分の短尺動画のつまみ食いで学べるのでしょうか。X(旧Twitter)のタイムラインに流れてきて、ふと目に止まった ”おもしろそうなコンテンツ” を流し見することで体系的な知識を得ることはできるのでしょうか。絶対に無理とは言いません。でもそれは、10万ピースあるジグソーパズルの1つをランダムで手にとって「なんだかわかった気になる」危うさを孕んでいると思うのです。
手軽さや即効性が重視される現代環境の中で、理論書をテキストとした学習プログラムを提供することは時代に逆行する取り組みかもしれません。99%の人には「あ、無理」「興味ない」とスルーされてしまうとも思います。
それでも、僕の信念に基づき、やります。
「いろいろ勉強しているけれど、マーケティング全体の中で、どこの何を学んでいるのか、よくわからなくなってきた」「全体観がわからない」「体系立って学べていない」「具体的ノウハウや事例学習だけでは限界を感じている」「深みがなく、場当たり的なことしか考えられない」「現場での応用が効かず、実践力が上がらない」などの悩みを持つ方に特にお勧めしたい。
理論を学んでください。
不確実性が増し、新しい概念や手法が次から次へと出現する目まぐるしい時代だからこそ「伝統的な理論」を学ぶべきなんです。
理論を学ぶメリットって何なのさ?
「話はわかった。でも、きょうび時間と労力をかけて理論を学ぶメリットがイマイチわからない」という方もいるでしょう。
理論を学習する意義について、渡辺三枝子著『新版 キャリアの教科書〈第2版〉』(ナカニシヤ出版)にとても良い考察があります。その内容を参考にしながら、僕なりにマーケターがマーケティング理論を学ぶべき理由についてまとめます。
まず前提として、理論はとても重要ですが、一方で理論はすべての事柄を完璧に説明してくれるものではありません。あくまで、「いまの段階では、ここまでわかっている」ということが整理されているものに過ぎません。
「理論は役に立たない」と言っているのではありません。「絶対的ではない」ということです。特にマーケティングは「お客さまに買っていただく」ために、消費者や市場の環境変化にフィットさせ続けていくべき概念ですから、未来永劫変わらない不変的なものにはなり得ません。
それでもなおマーケティング理論を学ぶべき理由は、「プロフェッショナルとしてのマーケター」と「マーケティング思考のある一般人」を分けるものだからです。
マーケティングの実務は、「お客さまに買っていただく」ために、「お客さまに買っていただけていない理由」を明らかにし、改善策を講じ、課題を解決することの連続です。相手(消費者や顧客)は人間ですし、競合との距離や関係も日々変化するため、「これが絶対!」という唯一の正解や万能薬はありません。目の前に「事実」はあるけれど、「真実」はひとつではないということです。
真実がひとつではない中で、変化する消費者や競合との関係の中で売上をあげていくためには、マーケターの一人ひとりが、事実から(できる限り正確に)ひとつの真実を捉え、対応していかなければなりません。
マーケティングは実践学(実学)ですから、マーケターが日々の現場実務の中で試行錯誤しながら経験を積んでいくものでもあります。そして実務を通じて得た経験は、何事にも代えがたい貴重な知恵や知見をもたらします。
一方で、それらのKKD(経験・勘・度胸)は、固有性が高く、再現性にばらつきが生じます。実践を通じて得た知識や経験は貴重ですが、それだけでは一定の限界があることも事実だと思うのです。
マーケターがKKDだけに頼らず、誰もが、ある一定の成果を出し続けるために有用なのが、「マーケティング理論を学ぶ」ことです。これが「プロフェッショナルとしてのマーケター」と「マーケティング思考のある一般人」とを分けるのです。
マーケティング理論とは、人間社会における「現象」が、研究者によって「事実」→「概念」→「理論」へと昇華したものです。
たとえば、企業の成長と衰退、新商品の開発とヒット、大規模小売チェーンの台頭といった「現象」があったとき、研究者は様々なアプローチから調査分析を行い、「現象」の中から複数の「事実」を導出します。
研究者は、発見した複数の「事実」の中から、共通するパターンや法則を見出します。この「具体としての事実」を「抽象化」する作業こそが「概念化」です。いくつかの概念が抽出された後、それらの概念を相互に連携させ、ひとつの意味のある全体像にまとめあげたもの、つまり「概念の束」こそが「理論」になるのです。
このように、マーケティング理論とは「どこかの誰かが机上でつくりあげたもの」ではなく、およそ100年以上にわたって、偉大な先人(研究者)たちが、人間社会における様々な現象から複数の事実を抜き出し、その複数の事実に共通する本質を抽象化した概念を束にしたものなのです。
マーケターが、上記プロセスで生み出されたマーケティング理論を学ぶことは、マーケティング実務において以下3つのメリットをもたらします。
1. 理論は、結果の予測性を高めてくれる
たとえマーケターの実務経験が少なかったとしても、理論があることで、「何をすると、どうなるのか」といった結果の予測をすることができます。理論が根拠となり、意図的な思考と行動ができるようになるのです。
2. 理論は、目の前の現象や事実を説明・解釈・整理する手がかりとなる
マーケティングは「お客様に買っていただく(=売上をあげる)」「お客様に買い続けていただく(売上をあげ続ける)」ことを目的として、あらゆる対策を講じていく異種格闘技戦のようなものです。「売上があがらない」理由を説明できない、またはその現象をある枠組みの中で解釈できないと、問題の本質を整理することができず、対策を講じることができません。
なぜお客さまが買ってくださらないのか、なぜ競合の売上は伸びているのか、なぜ自社が打っている施策が効かないのかなどについて、総合的な理解を深めていくための手がかりとして、理論は重要な役割を果たしてくれます。
3. 理論は、仮説を生み出す基盤となる
お客さまが買ってくださらない理由、競合が強い理由、自社の施策が効かない理由はひとつではありません。そしてそれらは個別で起きているのではなく、構造的に起こっています(相互につながっています)。
複数の要因が複雑に絡み合った問題を解きほぐし、因果の構造化を行うためには、筋の良い仮説を生み出せなければなりません。すべての打ち手は仮説から生まれるため、仮説がズレたら施策もズレ、思うような成果を出すことはできません。筋の良い仮説を生み出すために、「良い問い」を持つことができるかどうか。
抽象化された理論の手助けを受けることで、自身の実務経験によって得た知識や知見だけに頼らない「良い問い」や「筋の良い仮説」を生み出させる可能性を高めることができます。
理論に詳しくても仕事できない人もいるじゃん
「話はわかったけど、理論に詳しくても仕事できない人ってたくさんいるじゃん」という声が聞こえてきます。
これは、理論を知っていればマーケティング実務で成果を出すことができるのではなく、マーケティング実務で成果を出し続けている人はすべからく理論を学んでいる、が正しい理解だと思います。
一流のスポーツ選手はすべからく「型」を身に着けています。では、型さえ身につければ誰でも一流のスポーツ選手になれるかと言えば、そうではありませんよね。
スポーツの世界において一流を目指す(最高のタイムやスコアを出す)のなら、型を身に着けていることが大前提。その上で、自身のパフォーマンスが最大になる強みを伸ばしていく。
マーケティングも同じです。理論を学び、型を身に付ける。何も考えず、無意識に型にのっとった思考と行動ができるようになる。まずはそこが出発点です。理論の学習は実務での成果を保証するものではありませんが、成果を上げる確率を上げることに必ず寄与します。
優秀なマーケターは表立って理論を振りかざさないため、一見理論学習の有無が判断できないと思いますが、日々の思考と行動のベースには、ほぼ確実に理論による型が基礎をなしています。世界レベルの陸上選手が「右足上げて、次は左足を……」と考えながら走らないように、「考えなくても自然にやっている(でも確実に習得した型が効いている)」という状態がひとつのゴールなんだと思います。
どんなプログラムなの?
20年以上にわたって大学やマーケターの教科書として確固たる信頼を積み重ねてきた『マーケティング戦略〈第6版〉』(有斐閣アルマ)を教科書とした全14回のオンライン講義を行います。
マーケティングの教科書としてこれ以上わかりやすくかつ全体を網羅・整理してくれている本はありません(断言)。
オンライン講義は全回、不肖ワタクシ池田が行いますので、初学者にもわかりやすく解説することができると自負しています。
参加条件
自律的、主体的に体系的なマーケティング理論を学びたい方ならどなたでも参加いただけます。マーケティング学習や実務の経験も問いません。学生、初学者、ベテランも問いません。所属する業界も、企業規模も、部署も、被雇用者かフリーランスかも、現在は(育児や介護などで)仕事から離れているかも問いません。学びの意欲があれば誰でも参加OKです。
定員
ありません。
※ 無いと思いますが、500名を超えたら(ZOOMの関係上)締め切ります
料金
無料です(MARPSすごい!)
プログラム日程
全日程、19:00-20:00@ZOOMです。
第1回 6月13日(木)
マーケティング戦略の全体像(概論)第2回 6月20日(木)
企業成長のために市場需要を探ろう(事業機会の選択)第3回 6月27日(木)
企業のアイデンティティをどう形成するか(事業領域の選択)第4回 7月4日(木)
成熟市場におけるマーケティングの考え方(標的市場の選択)第5回 7月11日(木)
生活者に関するデータの収集と分析の考え方(市場分析)第6回 7月18日(木)
顧客に関するデータ収集と分析の考え方(標的市場分析)第7回 7月25日(木)
競争はどのようにして起こるのか(競争分析)第8回 8月1日(木)
日本型流通システムと流通構造の変化(流通分析)第9回 8月22日(木)
マーケティングの中核としての製品戦略とは(製品対応)第10回 8月29日(木)
価格設定のマーケティング戦略とは(価格対応)第11回 9月5日(木)
効果的な情報伝達に必要なこととは(コミュニケーション対応)第12回 9月12日(木)
環境変化に対応するチャネル戦略の姿(流通チャネル対応)第13回 9月19日(木)
競争優位を築くための基本理論(競争対応)第14回 9月26日(木)
形のないサービスのマーケティングとは(サービスマーケティング)
参加方法
以下のMARPSサイトから会員登録して各回講座にお申し込みください(全回一括での申し込みはできません。面倒くさくてごめんなさい)。
参加にあたって
参加される方は、事前に必ず『マーケティング戦略〈第6版〉』(有斐閣アルマ)の当該箇所を読了して講座に出席してください(講義は本を読んでいることを前提として進めます)
すべてはこの本から始まった
最後に僕と本書の出会いの話を。
僕はまだ若い頃、中小企業診断士資格を取得すべく、週末に学校(日本マンパワー)に通っていました。1996年、23歳のときです。
1年目は(全国模試で1000人中25位だったのに)見事不合格。涙に暮れつつ、2年目こそ絶対に合格するぞと門を叩いたのは、同年新設された生徒25人限定の少人数スパルタクラス(通称片野クラス)でした。
ここで僕の人生を変えた片野浩一先生(現、明星大学経営学部経営学科教授)と出会います。
片野先生は(当時主流だった)詰め込み型の暗記学習なんてツマラナイ(←池田の意訳)とし、物事の本質を学ぶ学習法を推奨しました。その一環として、普通は受験専用の参考書には使われない何冊もの課題図書が提示されました。その中の一冊が、運命の書『マーケティング戦略』(有斐閣アルマ)の初版(1996年4月出版)でした。
章ごとに見出しを貼り、読みながら付箋を貼り、マーカーを引きながら何度も何十回も読みました。
1年目の詰め込み学習でだいたいの暗記が完了していたこともあり、本書はそれぞれの領域の深い理解と、領域ごとに断片化していた知識を横につなげることに大いに役立ちました。
診断士試験学習前:マーケティングと言われても、どこからどこまでがマーケティングで、マーケティングにはどんな要素があるのか、よくわからない状態
1年目の暗記学習完了時:要素はわかった。要素ごとの主要理論もほぼ暗記した。しかし、要素ごとの接続ができていない状態(例:4PのそれぞれのPはわかったが、それぞれのPがシームレスにつながっていない)
本書学習後:環境分析、競争分析、流通分析、成長戦略や競争戦略、STP、4Pが個別ではなく全体の流れとしてわかるようになった。そればかりか(当時の)診断士受験科目だった経営戦略、人事、財務会計、仕入管理、店舗施設管理、商品管理など、他の領域とマーケティングが接続され、毎日「こことここもつながっていたのかああああああ!」とゾクゾクしっぱなしだった
このように、マーケティングの全体観がわかる→個別理論がわかる→個別理論がつながる→複数の個別理論を1つのマーケティングとして統合できるようになる→マーケティングと周辺領域(経営戦略や仕入、店舗など)とも接続できるようになるという一連の体験を通して、一つひとつの抽象(理論)もさらに上位の抽象と統合され、これらすべてが「経営」を織りなすひとつの要素なんだな、と理解できたときの達成感と爽快感はいまでも忘れられません。
ぜひ、皆さんにもそのスタートラインに立っていただきたい。水先案内人は僕に任せてください。
自分にもできるでしょうか?
できます。きっとできます。必ずできます。本書は380ページありますが、一部解説しない箇所もあるため、各回のボリュームはおよそ20〜30ページです。早い人なら20分、熟考しながら精読しても1時間あれば読み切れます。
最大1時間の予習と、1時間の講義参加(+復習)。これを14回転行えば本書(マーケティング理論)の学習は(一旦)完了できます。14回すべての講義を受講するためにはそれなりのカロリーが必要ですが、見返りは十分あります。
こんなチャンスめったにありません!
自分で言うのもなんですが、こんなチャンスはめったにありません。
一念発起して教科書を購入しても、ひとりぼっちで読み切るにはそれなりの覚悟と集中力が必要ですし、読み終わったとて「わかったような、よくわからないような……」となってしまう可能性があります。
なにより、学習における最大の敵は孤独による継続性(続かないこと)です。
学習を継続させるコツは、同時期に、仲間と一緒に取り組むことだと言われます。ひとりじゃない。みんなと一緒に取り組んでいる。その一体感が、「もうやめようかな…」「今日はパスしようかな…」という弱い心にブレーキをかけてくれるはずです。
6月から9月までの3ヶ月半、仲間とともに(先延ばしにしてきた、または難しそうだと逃げてきた)理論学習に取り組み、マーケティングの全体観を体系立てて理解する。
そこで脳内に格納できた知識は、マーケターとしてこれから数十年仕事をする上で、必ず一生の財産になります。しかも、抽象度の高い理論学習の効果は複利で効いてきます。
理論を学んだからといって、次の日から仕事のパフォーマンスが爆上がりすることはありません。しかし、1年、2年、3年後、この3ヶ月努力して吸収した理論知識は、必ず現場仕事のパフォーマンスを向上させるベースになるはずです。
各回の講義動画は(リアルタイムで参加できなくても)アーカイブで観ることができます。できる限りライブで参加してもらいつつ、どうしても参加できない場合はアーカイブで追いつくなどして、9月末にみんなと一緒に理論学習を一回転させる。
一緒にスタートし、一緒にゴールしましょう。
やるならいまですぞ!
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