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【第2話】上層会議A

【作者プロフィール】 
辻本恭介。福岡出身・在住のネット小説家。処女作でもあり、代表作「私が愛した人は秘密に満ちていました。」は人気を呼びポッドキャストでプロの声優を招いた朗読ドラマとなり、現在も配信が続いている。最高順位国内SF部門1位を記録した。 本作は次作「突き抜ける群青に泣け。」の音声化決定を記念して制作された小説である。 辻本恭介の作品は福岡のテレビ局及びラジオ局であるRKB毎日放送のプロジェクト「Podcast Lab. Fukuoka」参加作品です。


「定例会議を始める」
 ハクビシングループの上層部が集まっての重々しい会議が始まった。三年目である俺の下についた1年目の新入社員──大葉志穂と共に、今会議に出席している。
「本日はハクビシングループの経営をもっと若手に理解して欲しいとの大神社長のご意向で三年目の若狭信太わかさしんた、そして今年入ったばかりの大葉が会議に参加しております」
「よろしくお願いいたします」
 俺の上司である中川課長が自分たちを紹介する。ハクビシンのロゴである動物のハクビシンのイラストが華麗に会議室内のホログラムに投影されていた。
「君たち、ハクビシンは元々なんの会社だったか知っているかね?」
 彫の深い大神社長がこちらを見る。俺は心拍数が上がっていくのを感じた。俺は大学を出たばかりの頃、無職で親の脛をかじっていた。そこからプログラミングを独学で学び、ハクビシンに入った人間だ。新卒で入ってきたならまだしも、のらりくらりとやってきてプログラミングの技術だけでハクビシンに入った俺は、会社の事は何も知らなかった。
「……」
 俺が黙っていると、隣にいた大葉が口を開いた。
「ハクビシンは元々、チャットボットを開発するベンチャー企業だったと伺っています」
 大葉が答えると、大神は不気味な笑顔を浮かべ声を出して笑った。
「その通りだ。大葉君」
 流石だ大葉。大葉は都内の大学を卒業し、新卒で入ってきた若手組である。俺みたいな将来の事を何も考えずにフワフワ人生を送っていないだけある。大神社長は物静かな性格ではあるが、たまに怖い事を言うという噂で有名だ。大神を怒らせるとクビになるという噂も聞く。
「若狭先輩。これから何が始まるのでしょうか?」
 大葉がこちらを見て、澄んだ目で聞いてくる。
「今後新しく出すプロダクトの稟議とか、今世界の八割強を占めるAI『HAKUBISHIN AI』のアップデート情報とかを話し合うんだよ。多分、内容分からないだろうから、とりあえず聞いておけ」
「分かりました」
 大葉はこくりと頷く。こんな偉そうな事を言っている俺だが、この上層会議に出席するのは2回目であり、どことなく緊張が解けないではいる。そういった意味では、大葉と大して差はない。
「ハクビシングループは国からある提案を受けた」
 大神社長が口を開いた。国からだと? 一体何があったんだ。
 俺は眉間にしわを寄せながら話を聞く事にしたのだった。

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