『決着のギリシャ[軽量版] 冒険しない一人旅』 西洋文明揺籃の地には何があったか?
井川夕慈のKindle電子書籍『決着のギリシャ[軽量版] 冒険しない一人旅』より一部を抜粋して公開します。
これは自分にとって「決着」をつける旅である。
大学一年生のとき、古代哲学史の授業をとっていた。講師が「ギリシャを訪れるなら五月が最高だ」と話していた。なぜかずっとそのことが頭の中に張り付いていた。
以来、いつかはギリシャに、しかも〝五月の〟ギリシャに行ってやろう、という思いを胸に秘めていた。
けれど、ひとたび就職してしまうと、自由な時間をまとまった形でとることは難しいものだ。いつかはいつかは……と思うばかりで先延ばしになっていた。その宿願が、二〇年を経てようやく成就しそうである。
どうせ行くなら首都のアテネだけでなく、プラトンの『ソクラテスの弁明』に出てくるデルフォイの神殿も訪れてみたい。ソクラテスを「無知の知」へと至らしめるきっかけとなったその場所へ――。
旅行期間は一週間程度と仮置きして予算を検討した。まずは既存のパッケージ旅行を調べて相場を把握することにした。何日間でどこを訪れるツアーが、どのくらいの金額で売り出されているのか? パッケージ旅行に参加するつもりは毛頭無いが、もしも航空券やホテルを個人手配するよりも安いのであれば話は違ってくる。
学生の頃にお世話になったエイチ・アイ・エスのウェブサイトなどを参照した。すると、一週間で一五万円程度が相場のようだった。
続いて空の便を調べてみる。まず、日本からアテネへの直行便は存在しないことが分かった。さらに航空券は、行きと帰りの片道分を個別に購入するよりも、往復で買う方がだんぜん安いということも判明した。
この時点で候補は、イスタンブール経由のターキッシュエアラインズか、アブダビ経由のエティハド航空か、ドバイ経由のエミレーツ航空の三つに絞られた。これらはいずれも往復で一〇万円程度におさまりそうだからである。
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(続きはKindleでお楽しみください。)
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