
彬子女王『赤と青のガウン』
彬子女王 著 『赤と青のガウン オックスフォード留学記』を読みました。
女性皇族である彬子女王殿下がオックスフォード大学で勉強し、博士号を授与されるまでの日々を綴った留学記です。
「EU圏内における二週間以上の滞在の場合、護衛官は付きません」
皇族の側にいて守ってくれる人のことを「側護官」と言います。
日本でも海外でも、彬子女王殿下が出歩く時はかならず護衛が付きます。
しかし例外的にEU圏内で長期滞在するは護衛が付きません。
つまり彬子女王殿下は、オックスフォード大学に留学することで初めて側衛がいない生活というものを経験することになります。
*
「皇族は、庶民には想像もつかないような生活を送っているのだろう」
「身の回りの世話は全部側近がやってくれているのだろう」
「お金の心配なんてありえない」
本書を読むまで、私にはそんな偏見がありました。
しかし海外の大学に行ったら皇族かどうかなんて関係ありません。
非常に厳しい課題に悪戦苦闘する日々。
あまりの過酷さにストレス性の胃炎に苦しみ、鬱病一歩手前ではないか?と思われる状態にまで追いつめられます。
お金についても、皇族のイメージとはほど遠く、我々と変わらない金銭感覚をお持ちだなと感じました。
たとえば一度ロンドンのマーケットで「しめじ」をみつけたことがあった。嬉しくなって、袋にひとつかみほど入れてレジにもっていったら、五ポンド(当時のレートで1000円以上)といわれてびっくり。結局買わずに帰ることになった。
確かにしめじが1000円もしたらびっくりして買わないなぁ~。親近感がわくエピソードです。
日本にいる時は厨司(宮家専属の料理人)が料理を作ってくれますが、オックスフォードでは自炊です。
もっとも自炊をしていた理由は金銭的な問題というより、イギリスは外食がマズイというのが大きかったようですが。
*
我々の感覚からすると信じられないなと思うようなエピソードも一つご紹介いたします。
彬子女王殿下は寮生活で部屋の鍵をかけていなかったそうです。
宮家にいた時は365日24時間誰かがおり、家の鍵を持ったことがなかったので、部屋の鍵をかけるという習慣がなかったそうです。
ある日、夜中に知らない男性が女王殿下の部屋に入ってくるという事件が起こります。
男性は「オゥ、ソーリー」といってすぐに出ていきました。
おそらく、別の部屋の住人が酔っ払って夜中に帰ってきて、部屋を間違えてしまったのでしょう。幸い、何か盗まれたものなどはなかったそうです。
次の日、友人たちにこんなことがあったと笑い話として報告したら「酔っ払っていたその人にも問題があるけど、部屋に鍵をかけていないあなたはプリンセスとして無用人すぎる」と真顔で怒られた。ごもっともである。