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「読解力」とは何かを考える
犬塚 美輪 著『読めば分かるは当たり前?読解力の認知心理学』を読みました。
本書は、読めば読解力が付くという類の本ではないです。
また、本書の内容を実践すれば読解力が鍛えられる、という本でもないです。
「読解力」とは何か?ということを考えるための本です。
人が文章を読んで理解するというのはどういうことなのか?
それを心理学の観点から解説した本になります。
本書を読めば「読んで理解するというのは、思ったよりも複雑な行為なんだな」ということが分かると思います。
ちくまプリマー新書なので、高校生、もしかすると中学生でも読むことが可能かもしれません。しかし学術的な本なので、簡単な本であるとは思わない方が良いです。
「ワーキングメモリ」「スキーマ」「表象構築」など、専門用語がいくつも出てきます。それらの用語については本文で説明されていますので、事前に知っておく必要はありませんが、しっかり理解しながら読み進める必要があります。
警察を泥棒が捕まえた。
この例文を見た時、警察が泥棒を捕まえている様子をついつい思い浮かべてしまいがちです。
しかしよく見ると、主語が泥棒です。
この例題は勘違いを招きやすいように、主語(泥棒)と目的語(警察)の位置をわざと入れ替えています。
我々は「警察」や「泥棒」の前提知識があります。
知識があることは基本的には文章を読み解く上で理解の助けになりますが、知識があるためにかえって勘違いを招くケースもあるというわけです。
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「さかな」という手書きの文字ですが、これが読めるということも簡単なようで意外と奥深いのです。
活字には様々なフォントがあります。
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フォントが異なると字の形はかなり違ってきます。
それなのに我々はちゃんと「さ」と読むことができます。
それだけでなく、「ち」と「き」など、違う文字と区別できます。
これは、文字を識別するために重要な特徴と、どうでもいい特徴を私たちが理解しているということです。
文字を読めるようになったばかりの子どもの場合は、まだこの作業がうまくできません。
一文字ずつ「さ」「か」「な」と声に出して読み上げて、ようやく意味を理解します。
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このように線のまとまりがどのようになっているかを分析して「さ」「か」「な」という音に対応づけることを「文字を同定する」と言います。
現代社会では様々なフェイクニュース、誤情報に常に気を付けなければいけません。
誤情報に惑わされないためには「読解力」が欠かせません。
しかし「読解力」は多様な概念で、単純なものではありません。
本書では、誤情報に対抗するためにはメタ認識を働かせることと、知識と心の準備をすることが重要であると言います。
誤情報について研究するファン・デル・リンデンは、悪意のある誤情報の特徴として次の6つを挙げています。
①論点をすり替えたり否定したりして(正しい)情報の信頼性を貶めようとする
②感情に訴えかけて読み手を操作しようとする
③人々を分断し対立させようとする
④別の人や組織であるかのように振る舞う、なりすまし
⑤主流となっているストーリーに陰謀論を用いて疑問を持たせようとする
⑥すでにある緊張を誇張したり不和を煽ったりして世論を操作して、人々の意見を変えようとする
フェイクニュースにはこういう特徴がある、ということを知っておくだけでも、誤情報であることを適切に見抜きやすくなります。