2021.10.22 日本の諸悪の根源はこれか!? 日本的文化をタテに貫く重要論点・タテ社会とは?
約50年前に出版された『タテ社会の人間関係』。
著者は中根千枝氏。社会人類学者。
大正15年生まれ!
戦後まもない頃に、東京大大学院を卒業、日本全国を回り、調査を重ねる。
(海外に行くことも難しかった時代に)インドとロンドンでも研究。
平成30年度の「日本語教育能力検定試験」の過去問に、日本語教師なら読んでおくべき日本文化論3冊、みたいな感じでこの本が取り上げられていたので、図書館で予約して借りてきた。
他の2冊は、『菊と刀』『甘えの構造』。『菊と刀』面白かった! 『甘えの構造』はこれから挑戦。
だが、借りてきた後で、本をよく見てみたら
『タテ社会と現代日本』
だった。
「『タテ社会の人間関係』から50年も経ったので、
今の知見も加えつつ、どういう主張だったか補足します」
という「著者自ら解説」の語り下ろし企画本だったのだ。。。
予約ミス!!!
いや、書名が似すぎでしょ・・・。
でもまあ、かいつまんで読めるし、と思って、ぱぱっと読んでみた。
ぶっ飛んだ。
何これめちゃくちゃ面白いじゃん!
50年も経ってるのでやや時代と合わないところも出てきたけど、
基本、日本社会は中根氏が喝破したとおりだと思う!!
間違って借りてきたその本には、
『タテ社会の人間関係』のもととなった論文がついており、
その論文(といってもそんなに長くない)も読んだ。めちゃくちゃ面白い。
その論文だけ読んでもトクした気分になれる。
これ学校の推薦図書にした方がいいよ!
社会に出る前に読んだ方がいいやつ!
学生時代に読んでおけば、身を守れるかもしれない。
なんで日本がこんなに息苦しくてムラ社会で、上意下達で官僚主義で、全然イノベーションが起きないのか。
これ全て「タテ社会」だからです。
というのは言い過ぎですが(笑)
「タテ社会」はミスリードな言葉で、我々が日常生活で使っている意味とはちょっと違う。
私の理解では以下のような感じだ。
(私の理解、なので、正確には本をお読みくださいませ)
人々が集まる「社会」は、ざっくり2種類ある。
▼「ヨコ社会」=「資格(生まれながらの条件)」で集まる社会。
・イギリスの階級社会、インドのカースト制度など、出身階層で住む世界が決まる社会。
・基本、ヨコ=同じ資格(階層)の人同士で集まる。
・資格(階層)が同じなので、その階層内は基本平等。
・ジョブ型雇用と相性がいい。
▼「タテ社会」=「場(所属)」で集まる社会。
・○○村、○○学校、○○会社、など、場(所属)で集まる社会。
・「ただそこにいた人たちが集まっただけ」なので、なにか「拠り所」「まとまるルール」がないと、ただの烏合の衆になりがち。
▼そこで、日本では「場に一番先にいた人がエライ」という拠り所が発明された!!
・その場に一番先にいたヤツ=長老(高齢者)、古参、先輩がとにかくエラい。ということにする。
・一番後から来たヤツ=子どもと新人はとにかく下っ端。
・でも年功序列なので、ずっとそこにいればどんどん勝手に「エラく」なれる。
・仕事はメンバーシップ型。あるカタマリの仕事を、ムラ全員で、協力してやる。
・大事なのは調和。
▼ここに日本では「イエ」が加わる。「家制度」とはちょっと違う意味。
・日本の「イエ」は、「いつも一緒にいる人たち」という意味である。血縁ではない。血縁じゃない人も「イエの一員」になることがある。(大店の番頭的な)
・その店の娘に番頭が婿養子で入って”のれん分け”してイエを守る、っていう発想は日本だけらしいよ。
・会社でも、とにかく年取った人(古参の社員)が威張る。
・前からいる奴がエラいので、違う会社から若い社長がぽっとヘッドハンティングされようものなら、徒党を組んで足を引っ張る。よく聞くやつ。
・学校では、後輩は先輩に服従する。でも後輩も3年生になったら天下取れる。ずっといて「古く」なったからエラくなったのだ。
・戦争中の軍隊でもこれが顕著に表れたらしい。軍隊内の階級じゃなくて、「長くいる」古参兵がエラい、のがポイント。
▼さらに、日本では「タテ関係」を細分化し、たった一人のリーダー(社長)に、幾人かの副リーダー(取締役)、その下のチームも細かく分けて、部長→課長→係員を置くという組織形態を発展させた。
・各人が従うのは「直属の上司」のみ。
・各人が気にするのは、「いつも一緒にその場にいる人=同じ課、同じチーム」のみ。「場=所属」が大事だから。
・直属の上司を飛び越えて、さらに上の上司に相談してはいけない。タテの関係を乱す行為は非常に嫌われる。(私はそれやって、ものすごい怒られたことがあります…)
これ読んで(中根氏はそこまで書いてないけど)、私は思った。
▼これが日本の諸悪の根源である、と。
もうこの本読んでいるだけで、
日本的なおぞましいやつがぜんぶ出てる。
日本がムラ社会なのは「稲作だから」じゃなかった!
タテ社会で、公的には「ムラ=職場」を与え、プライベートでは「イエ」を社会の最小単位にし、そうやって統治機構が管理したからです!!!
日本の社会の最小単位は「夫婦」じゃありません! 「イエ」です!
なんですかイエって!!! 集まり??! 実態なさすぎ。でも確実に存在する。血縁だけではない何か。
概念?(笑)
私は常々、日本の「国体」(日本が日本であるゆえん)とは「空洞」だと思っており、つまり日本の真ん中はカラッポ(何もない)だからこそまとまれる(天皇はたぶん”空洞”を擬人化したもの。神社にご神体ってないじゃん? それを見える形にしたのが天皇というシステム←何の根拠もなし・笑)という、謎の民族だと思っているのだが、それです!(全然伝わらないよ!)
とにかくこのタテ社会が、現代日本の
・官僚セクショナリズム
・社会の孤独(違うムラの人だと思ったとたんに透明人間みたいに見えなくなり、どこまでも無関心になれるから)
・人々の政治への無関心
・政界から会社にまではびこる「派閥」
などなどを生んでいるのである!!!
あと「いつも一緒にいる人たち」は当然「対面で」ということなので
だからテレワークが進まないんだよ。
「いやあ、やっぱり仕事仲間とは実際会わないとコミュニケーションがさあ」って言う人いるじゃない?
「やっぱ会って一度酒飲まないとさあ」(←昭和)それ私だよ!!!!
まさにこれだよこれ!!!!!!
場によるコミュニケーションは、とにかく「資格」と違って、何の背景もなくそこに集まってる人たちなので、「全人格」を投入して全人格でコミュニケーションすることが求められる。
そこで大事なのは「共感」。
つまり「エモーション」。
つまり「感情」。論理や合理性を出したら嫌われる。
だからパートさんは気に入らない店長には従わない。
だから職場でもとにかく共感が求められる。
だからみんな眞子さまの結婚に反対する(暴論)。
だって結婚相手と結婚相手の母親が嫌いだから。
皇室から離れるとはいえ、天皇家はなんとなく、我々全員と「つながっている」感じがある(臣民は天皇の赤子とかそういうんじゃないですよ!!! 私は右翼でも天皇主義者でもないです。でも、なんとなく天皇家って「みんなの総本家」っていうか、そういう感じがしませんか実際?)。つまり、みんな、自分たちがあの親子と「疑似的親戚」になる、そういう人が我々の「本家の一員」になる、それがイヤなんじゃないかな。
だから昭和の会社は、みんなで「社員旅行」に行くんです。社員の家族まで連れて(私は小さい頃、父の会社の社員旅行でハワイとグアムに連れて行ってもらいました)。
今でも、リバイバルで流行してますよね。社員運動会とか(笑) 一体感の演出。これですこれ!!!!!
全人格を参加させないといかんのです、職場にもムラにもイエにも!! 「個人」など不要!!!!
謎設定の「ムラ」「イエ」のために、人々は「自分」を犠牲にして生きる。というか「自分(の感情とか意見とか)」がない方がうまくいくかもしれん。
それが国全体でうまくいったのが、高度経済成長。
社員は会社を「家」だと思い、会社(経営者)は社員を「わが子」だと思い、終身雇用&年功序列、とにかく頑張ればみんな給料上がる、長く働けば「場」での地位も上がってそこそこ出世できる、みんなハッピー!だった。
でも、経済成長が鈍くなり、飽和状態になった日本は、
中途半端に新自由主義を導入してしまった。
日本のムラ、タテ社会には特徴があり、それは、ムラ(いつも一緒にいる人)以外の人たちは人間じゃない、というくらいに、他人と認定したらまったく無関心になるということ。
自分のムラ以外、見なくてよくて、とにかくタテの上だけ見てればいい、
そういう構成が長く続いてきた。
今まではそれでよかったのだ。タテの中で、上に立った人たちは、下をちゃんと見てたから。
それが「ヨコ社会」的な「自助独立」という思想を導入、企業も「従業員は家族」だったのが「カネじゃー売上じゃー」を追い求めた結果、
「孤独極まった社会」が出現した。
自分のチーム以外関係ない。イエ以外は関係ない。だからパワハラが見過ごされる。違う家(ご近所)には助けを求められない。自分の実家も、もう違うイエだ。だから児童虐待が起き、孤独死が起きる。
日本のタテ社会も相当嫌だが、中途半端にネオリベが入った今の時代はもっと嫌。
日本に合うかんじで、マイルドに導入しないと・・・。いくらグローバルになったとはいえ、社会の形が全然違うところからルールだけ導入したら社会は壊れるよ。なんてこった!!
今すぐ政治家は全員この本を読み、国家をどう設計していくか見直してほしい!
そうなると、岸田総理はまだマシなのかもしれないな。昭和回帰で元に戻るだけだから。
でも果たして国力がもう成長しない日本で昭和みたいな感じでいけるのかな・・・?
全員ビンボーだったら耐えられることもあったろう。
でももはやそうじゃないからな・・・。
タテ社会はある意味平等だ。
突出して良くなったり悪くなったりするものがでないようにするシステムだから。
出る杭は打つ!(笑)
その代わり、上に立ったら下の面倒を見る、という倫理が働いていた。
今、それがない。
ただただ殺伐とした「砂粒」のような個人が、何の場も拠り所もなく、バラバラに生きている。
いやーーーーーーん。
なんで日本が先輩-後輩に異常にこだわるのかとか、
(年齢ではなく「年次」。その「場」にいつ入ったかで決まってしまう。法曹界や吉本興業など)
やたら派閥を作りたがるのとか、
全然他人に無関心なように見えるのとか、
転職が嫌がられがちなのとか、
(場に長くとどまる方が、タテの上に行きやすいから、長く一つの会社で働く方がいい)
全部説明がつくような理論なのです。
まあ見る人が見たら、もしかしたらいろいろツッコミどころはあるかもしれないけど、いや、1960年代(!)によくぞこれを発見されたなあ、という。
感嘆の念を禁じ得ません。
こういう女性学者(パイオニアすぎる・・・)がいらっしゃったんだなあ。
中根氏は、(今よりもっとジェンダー意識がない時代に)女性が一人で男性社会に入った苦労については、さらりと、
「日本は『場』に入るまでが大変だが、
一度入ってそこにいればだんだんタテの関係が出来るから
意外となんとかなりました」
的なことをおっしゃっている。
そういう意味では「階級社会」はいっそう、下克上は難しいだろう。
「ヨコ社会」が一概に良いともいえない。
大事なのは、日本にはこーゆー「社会観とシステム」が厳然と存在してるということをまず理解し! そしてこれからどうするか! という設計ですよ。設計。
どうすんだ。
「場」も「イエ」も崩壊しつつあるし、もうズタズタだよ。。。
こういう社会では「核家族」はサイアクだと思った。
でも現実問題「核家族」「単身世帯」は増えてしまった。私もそうだ。
これからどうする? どんな社会がいいか、みんなで考えないとね。
まあでもとにかく、私は、これを読んで怖かったです(笑)
日本はおそがい(※名古屋弁で「怖い」)とこだがや。
生まれてくるところを間違えた気がしてならない。
まあ、うまく機能すれば、いいシステムではあると思う。(統治機構としてはなかなかよく出来てるとは思う。大変都合がいい)
江戸時代には完成してたみたいだけど。やっぱすげえわ江戸幕府。だてに200年続いてねえわ、パックス徳川。
とにかく「なんで日本はこんななの?」って思ったことがある人はぜひご一読ください。
この名著、有名なんですかね??? 社会学とか日本語専攻だと大学で読むのかな??? 私は(割とこういうことに関心があったけど)知らなかったです。知れて良かった。ありがとう過去問(笑)
頭のいい子なら小学校高学年から読めると思うので、早めに読ませた方がよい。
そんで短期でもいいから海外留学して、「外国にもいいとこ悪いとこあるな」「日本もそうだな」と、いろいろ分かった上で改めて日本で活躍してもらいたい。
全政治家と全官僚はこれを課題図書とする!!!!!
『タテ社会と現代日本』(講談社現代新書)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210916
あとみんな、投票へ行こう(笑)