生前贈与の効果がなくなる前に~相続税対策
生前贈与は、お手軽な相続税対策の一つとして、広く認知され、利用されている。しかし、「令和3年度税制改正要綱」では、「相続税と贈与税を一体的に捉えて課税する観点から、暦年贈与や相続税精算課税制度の見直しを…検討する。」としている。この要綱によると、暦年贈与は生前3年までの贈与を相続税の課税価格としているところを、生前10年に改めることになっている。この要綱が施行されると生前贈与による相続税効果がほとんどなくなることになる。今回は、相続税対策の参考となるよう、生前贈与のしくみと取り扱いを記事にする。
開始前後の扱いは下図のとおり
1 暦年贈与とは
暦年贈与は1月1日~12月31日までに贈与を受けた財産について、110万円(基礎控除額)を超える場合に、課税される。課税される人は贈与をを受けた人になる。例えば子供が父から110万円、祖父から110万円の贈与を受けた場合、課税される人は贈与を受けた人になるので、220万円の贈与額から110万円を控除した110万円が贈与税の課税対象となる。父が3人の子供に110万円ずつ贈与した場合、3人の子供にそれぞれ課税されることになるが、110万円以下となるので、贈与税はかからない。また、110万円以下の財産の贈与を受けた場合は、税務署への申告は必要ない。
2 生前3年の贈与は相続税課税価格に加算される(現行)
相続税開始前3年以内に贈与を受けている場合、贈与を受けた財産(贈与時の価格)は相続税の課税価格に加算される。贈与財産が110万円(基礎控除額)以下であっても、加算される。ただし、贈与を受けた人が相続財産を取得していない場合は加算されない。(例:相続人とならない孫)
生前3年より前に贈与を受けていた場合は、相続税課税価格に加算されない。さらに、贈与が110万円以下の財産の場合は、贈与税もかからない。この性質を利用して、毎年、110万円以下の贈与を行えば、税金がかからずに、相続人等に財産を移譲できる。これが、生前贈与により相続税節税対策を行うスキームである。毎年、生存贈与を行う場合の注意点として、契約書を作らずに毎年と特定の人に贈与を行っていると、定期給付契約とみなされて、贈与額全額が相続税の課税価格となるおそれがある。対策として、①契約書は毎年作成する。②贈与時期(月)を変える。③贈与額を変えるなど工夫をしておく。
3 改正後の生前贈与の扱い
現行は3年前の贈与が相続税の非課税対象となっていたところ、新制度では10年前の贈与に引き上げられる。そうなると、相続開始前10年分の贈与が全て相続税の課税対象となってしまうので、せっかく110万円以下で毎年贈与をしていても、相続税を取られてしまう可能性が高くなる。
4 今後の行方を注視して、早めの対策を!
税制改正は、与党の税制調査会で審議されてるのみで、国会で審議されていません。今が、生前贈与対策のラストチャンスかもしれません。今後の国会の審議に注視して、対策はお早めに!
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