nui.

強迫性障害とミニマリズム、日常。

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最近の記事

共に暮らそう

 通勤路、朝。駅から会社までの道のりで、最近見かける人と犬。ゆったりとしたシルエットのお洒落お兄さんが飼い主。小脇に抱えられながらおとなしくしているのが犬。犬種を特定することはできないけれど、恐らくミックスではないかと推測される。そして、まだ成犬になっていない幼さが見受けられる。お洒落な人が小脇に犬を抱えている状況がミスマッチで何だか面白くて、見かける度に注目している。  抱えた犬をそっと地面の上に置いてみる。お洒落お兄さんは様子を伺う。優しくちょんちょんとリードを引っ張っ

    • 顔の傷は生きた証

       そういえば、と思う。これは時々思い出すことなのだけど、わたしの顔には傷がある。右頬の下部分、限りなく顎に近い皮膚に縫い傷がある。  ピッカピカの小学一年生だった頃、七歳。同じクラスであった友達と雑木林で鬼ごっこをしていた時に転んだ。地面には傾斜があり、足元が不安定だったのだ。転んだ先には小さな細枝が地面から突き出ており、ジャストミート、見事にわたしの右頬を貫いた。  痛みは全くなかったものの、顔の一部分に大きな違和感があった。恐る恐る指で違和感を触ってみる。ところがどっ

      • いなくなった後のお片付け

         気が付けばたくさんの人がいなくなってしまった。そのように錯覚しているその実は、自分が違う場所に移動しただけなのに。大切なひと置き去りにして、離れた場所まで歩いてきた。もう後戻りはできないとわかっていても、踏み出した一歩を切り落とすことは難しい。これでよかった、これが一番の望みだったはずなのに、どこかちょっぴり寂しくて虚しい。これが生きるということなのかしら。だとすれば人生は残酷だ。そんな冷たい現実を手にするために、人は一生懸命に生きている。  夢の中で過去に出会うとき、そ

        • N.0342 恋結び

           独身者がその辺をうろちょろしていると、必ずといっていいほど「結婚はしないの?」って言葉が降ってくる。してないから独りでおるんでしょうが、心のなかでツッコミつつ感情の抑制。「いい人がおればねぇ、巡り合わせ次第」無難無難な大人の回答。「お付き合いしてるひとは?」おうおうまだ質問するのか無粋な人よ。「それがいてないのよねぇ」恋人がいないことに関して後ろめたさを感じたことはないけれど、それでもなんだかこちらが悪いことしてるような、そんな気持ちになる。「いるの?」「いない」「持ってる

          「ホムンクルス」

          主演:綾野剛 脚本:内藤瑛亮 松久育紀 清水崇 監督:清水崇 原作:山本英夫 ホムンクルス(ラテン語:Homunculus:小人の意)とは、ヨーロッパの錬金術師が作り出す人造人間、及び作り出す技術のことである。 -Wikipediaより引用-  綾野剛演じる記憶を失ったホームレス名越進が、成田凌演じる研修医の伊藤学と出会い、報酬70万円を条件として頭蓋骨に穴を開ける人体実験(トレパネーション手術)を受け、術後7日間に渡って名越の状態を観察するといった物語。頭蓋骨

          「ホムンクルス」

          「まともじゃないのは君も一緒」

          主演:成田凌 清原果耶 脚本:高田亮 監督:前田弘二 「普通"ではない"予備校講師と知識ばかり豊富な恋愛経験ゼロの女子生徒が繰り広げる至って普通のラブストーリー?」  そもそも"普通"とは何なのか、絶対的な定義など存在しないというのに。 多数決を行った場合、過半数以上に属する意見や思考が"普通"とされるのだろうか。その場合の比率が6:4だった場合、残った4割の人々は普通"ではない"ことになるのか。普通について深く掘り下げれば掘り下げるほどに、複数の”ふつう”という

          「まともじゃないのは君も一緒」

          「花束みたいな恋をした」

          主演:菅田将暉 有村架純 脚本:坂本裕二 監督:土井裕泰  「別れる男に、花の名前をひとつは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」とは川端康成氏の言葉です。彼は1972年に自殺を成し遂げています。  その肝心の花の名は教えずに、造形のみを記憶の断片としてしまえば、別れた彼の中で花が咲くことはないのだろうな、と本作を観て一番深く残っている感想です。意識的か無意識的かは脇に置いておいて、それはきっと彼女なりの優しさだったのではないかと私は思う。言葉、これは即ち呪い

          「花束みたいな恋をした」