共に暮らそう
通勤路、朝。駅から会社までの道のりで、最近見かける人と犬。ゆったりとしたシルエットのお洒落お兄さんが飼い主。小脇に抱えられながらおとなしくしているのが犬。犬種を特定することはできないけれど、恐らくミックスではないかと推測される。そして、まだ成犬になっていない幼さが見受けられる。お洒落な人が小脇に犬を抱えている状況がミスマッチで何だか面白くて、見かける度に注目している。
抱えた犬をそっと地面の上に置いてみる。お洒落お兄さんは様子を伺う。優しくちょんちょんとリードを引っ張ってみる。「行くよ」と声をかけている。ミックス犬は控え目ながらも確固たる信念の元、微動だにせず虚空を見つめている。時折飼い主を見つめては何かを訴えかけている。誰がどう見てもその場から動きたくなさそうだ。飼い主は微笑を浮かべながら静かに呆れている。無理にリードを引っ張って、無理矢理動かそうとすることもない。あくまで犬の気持ちを尊重しながら、軽やかに側で見守っている。
こんな光景を何度か目にして、わたしはこの一人と一匹が大好きになった。いつも似たような光景。散歩にチャレンジしてみるも、全然動きたくなさそうな犬。呆れる微笑のお兄さん。その横を通り過ぎるわたし。犬ってみんな散歩が大好きな生き物だと思ってたんだけど、やっぱり人間と同じで個性があるもんですね。絶対に散歩なんかしたくない!って子の話し、周りでもチラホラ耳に入ってくる。かと思えば、雨の日でも台風の日でも絶対に散歩せにゃならんストイックなワンコもいらっしゃる。みんな違って、みんな良い。可愛い。
元気バリバリな犬も可愛いけれど、臆病で控え目な犬も可愛らしい。このまま一人で暮らしていくのかと考えていたけれど、人間以外の生物と共に暮らすのも悪くないかもしれない。なんてことを考える通勤路、過去と未来と現在と。
了
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