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N.0342 恋結び


 独身者がその辺をうろちょろしていると、必ずといっていいほど「結婚はしないの?」って言葉が降ってくる。してないから独りでおるんでしょうが、心のなかでツッコミつつ感情の抑制。「いい人がおればねぇ、巡り合わせ次第」無難無難な大人の回答。「お付き合いしてるひとは?」おうおうまだ質問するのか無粋な人よ。「それがいてないのよねぇ」恋人がいないことに関して後ろめたさを感じたことはないけれど、それでもなんだかこちらが悪いことしてるような、そんな気持ちになる。「いるの?」「いない」「持ってる?」「持ってない」質問として投げかけられる条件を満たしていないことに対するほんの微かな罪悪感、しかもこれ無意識に発生していてなんだかなぁ。


 街中を歩いていて思うことがある。生物学上、人間は男と女に分別されていて、その男と女が手を繋いで歩いている。恋人繋ぎ、素敵。しかし一体、こやつらはどこで出会い、どのタイミングでどんな感情を抱き、現在の手繋ぎまで至ったのだろうか。どうして一緒に過ごしたいと思うんだろう、どうしてこんなにも幸せそうなんやろう。やっぱりそれは人間としての、動物としての本能で直感、種の反映プログラムに則っているだけなんだろうけど、それだけで説明しきれないことってたくさんあるよなぁ。逐一LINEで現状報告をしたり、色んな場所に足を運んだり、お互いのこと肯定し合ったり。そうすることでより優れた遺伝子配合が成されるから人生のその瞬間を緻密に共有しているのかというと、決してそういうわけじゃあないよね。世論として、どうせ男はセックスがしたいだけヤリたいだけの生き物、脳が性器で構成されてる、なんて揶揄されてるけど、それだけが全てじゃないんだぜ、と思う私的な男性意見。もちろんのこと、そういうスケベな気持ちあらへんわけではないけれど、自分が求めているのはもっとこう、感情の繋がりというか、生物としての本能を凌駕した部分にある一種の哲学、その部分的共有を求めているというか。セックスは物理的密接の限界を思い知らされる行為で悲しい要素が多分にある。だれも、なんにもわかってくれない、というエゴがヒョイと顔を出すような感じ。まぁまぁこれがいわゆる拗らせているというやつで、こういうことブツブツ呟いているやつは、死ぬまでそういうことブツブツ言ってるんじゃないかな。ともかくそれが何であれ、手を繋ぐその姿はなんとも言えず微笑ましい。


 本当に自分は結婚がしたいのか、なんてこと意味もなく考えてみる。なんやかんや過去には恋愛とやらをしてきたけれど、当時の脆くて淡いあの青色を正確に思い出すことができない。色んなことを知っていくなかで人は成長していくけど、その中にはいらないもの余計なものも混ざっていて、そういうもんに毒されて初心はどんどん消えてくんだろうな。愛とか恋とかそういうのは一時的な錯覚、条件付けの感動だなんて捻くれたこと考える瞬間もある現在、それでもたまに錯覚したいなと思う時もあって、うーん自分が難しい。気が付いたときには誰に対しても平等になってしまった。男とか女とか年齢とか、好きとか愛情とかその何もかもがマジでどうでもいい。ただシンプルに目の前にある人間性と向き合いたい。それだけでよくて、その人間性がドンピシャで当てはまり魅了されることを人は恋と呼ぶのだろうか。お金、言葉、行動、有形無形あらゆる資産を投じて相手に尽くしたい、幸せになってほしいと願う心を愛と呼ぶのだろうか。わからない、ずっとずっとわからない。愛の本質も、結婚制度も、独占欲とか不倫も、そのすべてがずっとわからないままでいる。


 マッチングアプリやらないの? そう言われることもありましてね。助言されてもなおアプリすらインストールしていないということは、そういうことなのだきっと。いまやアプリでの出会い、そして結婚にまで至る可能性があるなんて素敵。でも、必要に駆られればなにも言われなくても利用しているだろうし、「いっちょやってみるか」の冒頭一文字すら存在しないわたしの頭は、多分そういうのなんにも求めてない。もっと簡単に考えれば、道を歩いているだけで色んなひととすれ違っているわけで、声をかければそれはもう出会いに変換されて、いわゆるナンパみたいな感じではなく、もっとこう日常的にナチュラルでほんわかした感じでさ。出会いなんてその辺にたくさん転がってるのに、それを見なかったこと無かったことになんてしたくない。そもそも出会いってなんやねん。本人がそう思うか、それを出会いとしてカウントするかの問題で、そう考えたら愛情みたいなものだって後々になって附随するものだろう。一目見た瞬間から好きです全てを捧げます愛してます! なんてことにはならない。一目惚れってそういう感じなのかな? だとすれば愛とか恋よりも一目惚れって概念の方に興味を感じる。なんやこれ、何の話ししてるん。そうそう、マッチングアプリ、周囲でも利用されている方はたくさんいて、アプリを通過点として結婚されている方、幸せそうにされている方、よくよく知ってる。そういう方たちを見てもなお、何も心が動かないわたしは別にそんなことどうでもいいのかもしれない。一人でもええわ、ってお気楽に考えてるのかもしれん。そんなそんなことよりも、わたしもっとやりたいことあるのです。だから今日も書いてる、ただそれだけ。素敵な女の子男の子よりも、物好きな編集者さんとマッチングしたい、そんな味気無さ今日この頃。



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