「惡の華」「血の轍」「おかえりアリス」押見修造作品を読んだ感想。
最近時間があるので、漫画をだーっと読んでいる。そのなかで印象深かったのが押見修造さんの作品だ。
最初に「血の轍」を読んだ、母親と息子の歪んだ愛憎劇で、毒親に人生を壊される主人公が痛々しくて鬱々とした気分で読み進めるのだけれど登場人物の心理描写が秀逸なので夢中で一気に読んでしまった。
他にも読みたくなり次は「惡の華」を読んだ、こちらは中学生の青春物かと思いきや、やはりドロドロとした愛憎劇で、このクソムシだらけの世界から出たいと願う女の子に翻弄される主人公の変態ラブストーリー?でやはり面白い。
で「おかえりアリス」だ、高校が舞台で、主人公には告白したい中学生の時からの好きな女の子がいるのだけれど、そこに幼なじみの男の子が女装した可愛い姿で現れさて主人公はどちらを選ぶのかというこれもドロドロの愛憎劇。
三作品とも面白いのだけれど、共通するのは主人公は基本思春期の男の子で、女性2人(おかえりアリスは女装した男の子だけれど)と主人公が三角関係になりどちらを選ぶのか!って要素が必ずあること。そして、この「世界」から出たいというテーマ。
家族や社会や性別や自己意識など、登場人物を取り巻く「世界」の檻の中から出たい、破壊したいというモチベーションがストーリーを進めていく。その動機は理解できる気もするしよく分からなくもあるのだけれど、とにかく心理描写を細かく丁寧に描くので引き込まれてしまう。
とくに思春期の女の子特有の恋愛への憧れと、恋敵への嫉妬心などがリアルで胸が締め付けられる。自分の学生時代にもそんなことがあったような…とくたびれたおっさんの琴線にビシビシ響くのでうっ!となってしまう。しかもほぼ恋愛がこじれてうまく行かないので余計にブレイキンハートなのだ。
どの主人公も主体性がなく、周りの女性に依存して振り回されるのだけれどその中で、自己決定と否定を繰り返しながら成長していく。というのも共通している。あと登場人物皆病んでるし。いやほんと。
けっして読んでいて楽しい作品ではないのだけれど、読み終わって数日はなんだか胸がザワザワして落ち着かない、あれは何だったのかと思わず心の中で反芻してしまうそんな作品なのでした。
まあつまり面白いのでまだ未読の方はぜひ、オススメです。