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海の上で“何もしない”を楽しむ贅沢。 アラサー女、【太平洋フェリー】で心の強制シャットダウンしてみた
胸を張って「何もやらない」を楽しむことができる
唯一無二の空間。
“何かをしなきゃ”とつい思ってしまいがちな
あなたに、心も体も強制シャットダウンできる
長距離フェリーの真髄をお伝えしたい。
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私は船が好きだ。
大きな船から小さな船、
速い船からゆっくりした船まで、
様々な魅力を持った船が好きだ。
私が特に今ハマっているのは
「長距離フェリー」。
長距離フェリーとはその名前の通り
長距離を移動するフェリーである。
多くの長距離フェリーは夕方から夜にかけて出港し、
約10〜40時間ほどかけて目的の地へと移動する。
寝ながら移動できるため、
ホテルに宿泊するような感覚で
乗船することができるのが魅力の一つだ。
フェリーと言えど
単なる移動手段と思うことなかれ!!
車を載せて移動できるのはもちろん、
船内にはレストランや大浴場、
はたまたゲームコーナーや
シアタールームなども完備されている。
船という限られた空間の中で
他では味わうことのできない
最高に贅沢な時間を過ごすことができるのだ。
今回は先日乗船した
太平洋フェリー「いしかり」での
素晴らしき時間をお届けしようと思う。
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【太平洋フェリーとは】
太平洋フェリーとは
名古屋ー仙台ー苫小牧を繋ぐ
国内最長航路の大型フェリー。
名古屋ー仙台間は約22時間、
仙台ー苫小牧間は約16時間。
なるべく長く乗っていたいため
名古屋ー苫小牧まで行きたい気持ちだったが
仕事の都合もあり、今回は名古屋ー仙台間の
約21時間を楽しむことにした。
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【船内エントランス】
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青と白を基調にした落ち着いた船内デザイン。
広々としたエントランスは
高級ホテルを思わせるほど。
船へ続く長い乗船通路を渡り切ったときに見える
この景色は、
別世界に瞬間移動したかのような気持ちになり、
思わずテンションが爆上がりしてしまう。
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ゆるゆると休憩できる
椅子やテーブルがずらりと並ぶプロムナード。
後ほど紹介するが、
この空間こそ最高なのだ。
【客室】
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今回泊まったのは上下セパレートタイプの
2段ベッドである「B寝台」。
等級的には2番目に安い部屋になるが
十分な快適さである。
鍵付きのロールカーテンもついているので
寝る時も安心だ。
他にも客室の種類はさまざまであり
雑魚寝タイプの2等和室から和室タイプのお部屋、
まるでホテルのスイートルームかのような
ラグジュアリーな部屋まで幅広く展開している。
これだけで「船旅」のイメージが
大きく変わるのではないだろうか?
【レストラン】
太平洋フェリーのレストランは
朝昼夜ともにバイキング形式である。
見よこの品揃え!!!!!
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これは夕食の一部を抜粋したものだが
もう、
楽しい!!!!!!!!!
シンプルに楽しい。
好きな物を好きなだけ、微睡みながらゆっくりと
食べてはおかわり、
食べてはおかわりを繰り返す。
うん、最高じゃないか。
ちなみに、朝ごはんはこんな感じ。
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朝と昼は海を眺めながらバイキングを楽しめるため
より一層ワクワクするものである。
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「でも私はバイキングほど
たくさん食べられない…」
という方もご安心あれ!
同じデッキ内にパスタなど単品で
販売しているラウンジがあるのだ。
もちろんお酒の種類も豊富なのでつい迷ってしまう。
レストランやラウンジの他にも
売店でお菓子やつまみが購入できるほか、
バリエーションが豊富すぎる自販機も完備。
こんなに全レーン種類が違う酒の自販機初めてみた。
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【くつろぎスペース】
遊びたくなった時には
ゲームコーナーやカラオケなど
娯楽も盛りだくさんだ。
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太平洋フェリー内には
シアターラウンジなる設備がある。
時間によっては音楽のコンサートや
映画なども楽しめてしまうのだから
もはやこれを単なる移動手段ととらえるだけでは
勿体なさすぎるのだ。
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そしてなによりの魅力は大浴場!!
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海を見ながらゆったりくつろげる
ジャグジー付きのお風呂。
私はこれが大好きで
ゆらゆらと揺られながら
海を眺めてぼーっと過ごす。
風呂という日常すぎる行為を
海の上の船の中で行うという
急遽の非日常体験。
ほんとにこれが病みつきになって
しまって仕方がない。
銭湯巡りの究極形態と言えるだろう。
「これだけ色々あったら時間いっぱい満喫できちゃうんじゃないですか?」
と、思いましたよね?
しかしこれだけ盛りだくさんなコンテンツがあっても
まだまだ時間が有り余るのも
長距離フェリーの特徴のひとつ。
時間が有り余っているにも関わらず
船の運行場所によって電波が完全になくなる
時間帯が訪れるのだ。
時間はあるが、やることがない。
でもスマホも使えない。
だが私的には
ここに長距離フェリーの真髄があると思っている。
「やれることがない」
ということは
「何もやらなくて良い」
のだ。
私は普段からダラけるのが好きだ。
しかし何もせずただただダラけているとつい
「こんなに何もしなくても良いのかな…」
と不安になってしまう。
何かしていない自分には価値がないと
焦ったりもする。
(さすがにここまでは行き過ぎかもしれないが)
少なからず「何もしない」ことに
罪悪感を抱く方も少なくないのではないだろうか。
そんな私に長距離フェリーは
まさにもってこいなのだ。
なんてったって「何もできない」からだ。
船に乗ってしまえば外に出かけることはできないし、やれることはあれど限られている。
そう、
「何もできない」から
胸を張って「何もやらない」を楽しむことができる。
これを楽しめるかどうかは人によるかもしれないが、
私はそういうある種の制限の中でこそ
生き生きとできることに気がついた。
お風呂に入ってただただボーッとするもよし、
外に出て海を見ながら風に吹かれるもよし、
布団に入ってゴロゴロと寝たって良いのだ。
だってここは船の中。
「何もやらない」をいくらでもやれる最高の空間。
心も体も強制的にシャットダウンできる。
シャットダウンの方法も人によって
無限にあると思うが、
まず一例として私のシャットダウン方法を
伝授しよう。
〈長距離フェリーでのシャットダウン方法〉
①寝る
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まず寝る。
ふんだんに寝る。
納得いくまで寝る。
ここが一番大事といっても過言ではない。
②デッキに出る
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存分に寝たら
眠気覚ましにデッキに出る。
ひんやりと冷たい潮風を浴びながら
だんだんと意識をシャンとさせていく。
遠くに見える島々を見たり、
近くを通る別の船を見たりするのもまた楽しい。
③お風呂に入る
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潮風を存分に浴びて
少し体がしょっぱくなってきたら
次はお風呂だ。
芯まで冷えた体をじゅわぁ〜っとほぐす。
少し揺れる浴槽が、これまた心地よく揺らしてくれる。
それは赤ちゃんの頃のゆりかごのように、
心も体も丸裸のまま海を見ながらのんびりと。
最高に贅沢なひとときである。
だがしかしこれで終わりではない。
④グダグダする
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お風呂上がりにカジュアルな服装で
プロムナードでグダグダする。
グデーっとしながら
窓から見える海をただただ眺めるもよし。
風呂上がりにアイスを食べるもよし。
お酒をプハーッとするもよし。
何をしても良いし、
何もしなくても良い。
この瞬間が何よりも大好きだ。
それはもう意識はだんだん遠のいて、
また【①寝る】に戻って
再度①〜④をひたすら繰り返す。
これであなたも
完全にシャットダウンできること間違いない。
いかがでしたか??
お船、良くないですか??
私もまだまだ乗ったことのあるフェリーは
少ないため、これからどんどん色んな
お船たちと出会って行きたい。
ぜひ少しでも興味を持った方がいれば
近くの船を探して
心も体もシャットダウンしてみてはいかがだろうか?
きっとあなたも
海の沼にハマるはず。
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