母、全裸号泣。双極性障害の母を通して15歳の僕が見たもの。
15歳の夏の日。
帰宅すると、
赤ちゃんの泣き声(のようなもの)が
聞こえた。
しくしく、ぐすぐす、えんえん
ではなく
あーあーーーー
えーーーえーー
といった類の声だった。
ドアを開けると
全裸の母が転がっていた。
服はリビングで脱いだらしい。
嘔吐もしたらしい。
母は僕に
『褒めて、愛して、抱っこして』と
泣きながら言った。
僕は母を抱きしめた。
抱きしめながら
自分が抜け殻になるのを感じた。
もう一人の僕は体を置いてけぼりにして、
母と母を抱きしめる僕を上から見ていた。
俯瞰で見ている僕が
抜け殻の僕に言った。
抜け殻の僕は思った。
その日から僕は母を
ひとりの女性として見ている。
15歳の僕は思った。
どうして
自分で自分を褒めないんだろうか。
どうして
自分で自分を愛さないのだろうか。
どうして
自分で自分を抱擁しないのだろうか。
その時は不思議でならなかった。
追記:母の存在は、僕が今の仕上がりになった要因のひとつで、人間に強い興味を持つきっかけでもある。