床を拭く悦び。放課後の教室にはご褒美が転がっている
なんだか、嬉しそうですね…
床を拭くのが好きなんですか?
先生は私のことを見下ろしながらこう言った。
私の耳は瞬時に熱くなった。
赤くなってないといいが。なっていたとしても髪で隠れていてくれ。
そう強く思った。
先生は私の特性に気がついていたのだろうか。
放課後、誰もいない教室、沈みかけた太陽、制服、濡れた雑巾、教壇
先生は教卓で仕事を片付けている。
私はみんなが嫌がる床の水拭きをしている。
先生は私を見下ろす。
私は先生を見上げる。
視線が合う。
私は目をそらす。
先生は、どうしたんですか?と微笑む。
濡れた雑巾でまた、床を拭く。教壇を拭く。
先生のスポーツサンダルが見える。
私は悦びを全身で味わう。
床の水拭きは、私にとってご褒美でしかない。
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