小説⑤~Center of the A~
2161年 8月2日 12:00 場所 教室 教卓側
真っ暗なこの世界、大人も子供もどうすることもできず、みんなその場に立ち止まっていた。
「この素材って、鉄なのかな?」
雪が勇太に訪ねる。
「わかんない。冷たいけど、鉄らしい冷たさじゃねえよな。なんだろう、ここから冷気が出ているかのようなそんな感じ。鉄だったら熱で溶けるか?」
「えっでも、火の温度でも溶けないでしょ。」
「鉄ってそうか、、、」
「ねえ、理科の時間に塩酸が鉄を少しづつ溶かすって言ってたよね?逆は?脱脂綿とかに塩酸を含ませて鉄に貼っておく。完全に溶けないにせよ鉄で作られているかどうか、見られる。どう?」
「乗った。なにもやらねえよりまし。」
「理科室も隔離範囲に残されているから、救いだね。取りに行こう。こんな真っ暗な世界日本にあるのかな。。。まるで地面の下にいるみたいだね。」
「、、、、、行ったことねえから知らね」
「終、無事でいて」
ここに残った、ここに残された、閉じ込められた、離された、救われた、何が正解なのか、どこを見ても分からない今、触れた感触だけが確かな事実として、私たちの記憶に残った。