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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第六部  第八十七話「カイドー王の謎」

第八十七話「カイドー王の謎」

祖母は戦後の復興の場所に落とされた。

祖国でも戦争に巻き込まれ、

この国でも辛く酷い目にあっていた。

それでも最後まであきらめずに戦い、

国に戻ることも叶わずに亡くなってしまった。

でも、ちょっと待って。

今こうして話ができているという事は、

王国に戻れるようになったの?

もう命を狙われることもないの?

瑠璃がそのことを話すと、

女王は静かに首を横に振った。

【あなたには本当に申し訳ないと思っているの】

えっ?

瑠璃が眉間にシワを寄せた。

【あなたに伝えたいことがあるのです】

女王は静かに口を開いた。

【長い歴史の中でもこの戦争は、

最も長期にわたり続きました。

それはカイドーが国民を操り、

国を手中に収めたことから始まった、

残酷な歴史です。

カイドーはわが世界のものではありません。

恐らくそちらの世界から飛ばされてきたのでしょう】

えっ?

これがよく聞く話題の異世界ヒーロー?

ん?

この場合は逆か?

異世界侵略者?

瑠璃は言葉も出せずに聞いていた。

【この世界のものは自分が暮らす国以外は、

よく知らない国民が多いのです。

貿易も少なく、

外から来るものは行商くらい。

全てが自国基準の国民なんです。

そんな中、突然現れたのがカイドーでした。

外の世界を見て回ってきたのか、

国民が興味を持つような話をし、

いつの間にか入り込んできました。

それからすぐにナリア前王が崩御し、

まだ幼い王子に内政は務まらぬと、

王国内でも内乱が起きていました。

その動きは近隣諸国にも伝わり、

わが国でもその行方を見守っていました。

カイドーはそんな国民の信頼を得て、

王の座に君臨したのです。

王族の不審死が続いたにもかかわらず、

カイドー王の人気は下がることなく、

ナリア王国はどの国でも危険と言われ始めました。

ステラ王は得体のしれないカイドーが、

前王を死に至らしめたと言っていました】

権力は人を狂わせる。

どの世界でも平等に起こるらしい。

瑠璃は下を向いて考え込んだ。

でも、

カイドーがこの国から飛ばされているとしたら、

その前にも飛ばされている人間がいるかもしれない? 

瑠璃がその事を聞くと、

【私達の調査では存在の確認はされていません。

長く続く戦争でそちらから飛ばされたものは、

全て亡くなりました。

反対にそちらでもエリスの様に落とされ、

辛い生活を余儀なくされた人物がいたかもしれませんね】

女王はそう話した。

「そのカイドー王は、今はもう亡くなっているんですよね」

【ええ。既に死亡が確認され、魔法で塵となりました】

「そうですか」

瑠璃は考えながら呟いた。

【わが世界とあなた達の世界が、

つながっていると分かったのも、

そのカイドーによってなのです。

我が国の兵がナリア王国に入り、

王室で蠢く鏡を見つけたのです。

誰もが恐ろしく触れることができずに、

私が引き受けました。

この鏡は壊すことができません。

物理的にも魔法を使ったとしても】


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八雲翔
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