【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第五部 第六十九話「初めての水遊び」
第六十九話「初めての水遊び」
暑くなり、
この日は大きなゴムプールを裏庭に出し、
水を張った。
一度、
水遊びができる公園に連れて行ってから、
パシャパシャしたがるので、
滑り台付きのビニールプールを買った。
ポンプと合わせて一万円近くかかったので、
出来るだけ長く遊んで欲しい所だ。
瑠璃は日よけを立てて、
準備を終えると、
勝手口を開けた。
これは少し使いにくかったので、
リシェントドアに直してもらった。
「プール~! 」
フォスがシアンと一緒に走ってきた。
妖精たちもやってくると、
不思議そうにビニールプールを見ていた。
「トイレ行った? 」
うんうんと頷くフォスを見て、
「俺が連れてったから大丈夫だぞ」
いつもながら上から目線でリチアが言う。
「ついでに言うと、
シアンも大も小も済ませたぞ」
「それはご苦労様」
瑠璃は笑うと、一人と一匹をプールに入れた。
妖精たちも水鉄砲で楽しそうだ。
瑠璃はデッキチェアを持ってくると、
仕事をしながら、
フォス達を見ていた。
国から狙われることが無くなっただけでも、
ホッとする。
魔法でごまかしていたとはいえ、
監視カメラがあった時は、
何があるのか分からず、
落ち着かなかった。
あとは鏡と手紙の問題がクリアできれば、
ひとまず安心できそうだ。
小さな竹林があるのに、
例年以上に夏の日差しがキツくなっている。
そろそろお昼だし、
プールから出さないと。
瑠璃がそう思っていると、
伍代がやってきた。
「ベルを鳴らしても返事がないからと思ったら、
ここだったのね」
「あっ、ばあば~」
フォスとシアンが振り返った。
「暑いとプールよね」
伍代は笑うと、
「お昼もう済ませちゃった? 」
と聞いた。
「いえ、これからです」
「ちょうどよかった。
エリスさんが好きだった、
お稲荷さんを作ったのよ。
一緒に食べない? 」
そういって入れ物の蓋を開けた。
「わぁ、美味しそう~」
瑠璃も笑顔になると、
「じゃあ、素麺のお吸い物作るから、
それと一緒に食べましょうか」
と言った。
「いいわね」
伍代も笑顔になると、
「じゃあ、お先にお台所を借りるわね」
と裏口からそのままキッチンに入った。
「フォスとシアンはお風呂で、
シャワー浴びないとね」
フォスとシアンの体を拭きながら話していると、
ムスッとした顔で妖精たちが見ていた。
「俺達のお昼はいつ? 」
アレクの言葉に瑠璃は、
「伍代さんが帰ったらね。
でも~私の仕事部屋にお菓子の箱があるから、
開けて食べてていいわよ」
「お菓子? 」
妖精たちの目が輝くのを見て笑った。
この家は二部屋あるので、
フォスが使うまでは、
瑠璃が仕事部屋として使用していた。
そこに内緒で買っておいたお菓子があるのだ。
「ミニ冷温庫の中にジュースも入ってるから、
飲んでもいいわよ」
その言葉に妖精たちがわ~と走っていった。
「じゃあシャワーを浴びて着替えてお昼だ」
瑠璃はそういうとプールに蓋をして、
フォスとシアンを連れて家の中に入った。