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【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第二部ー61

「気になるイベント」

「今そこでハンバーガーを配ってるって聞いたんですけど」

そういって弥生が入ってきた。

「昼食に買ってきたんだけど、食べる? 」

「食べます。
今日は消去が多くて場所を離れられなかったから、
お腹ペコペコ~」

向井は笑いながら袋を差し出すと、

「景品もいるなら一つ持って行ってください」

「あ~これね。
冥王と牧野君が騒いでたんだけど、
へえ~あの漫画なんですね。
私も欲しい。これ面白いですよね。
どれにしようかなぁ~」

そういって赤い神聖ばあを選んで手に取った。

「弥生ちゃんはばあ推しですか? 」

「そうね。彼女カッコいいんですよ。
こんなおばあさん見たことないし」

弥生が笑ったところでエナトが手元を見て言った。

「それ、自分で作ったの? 」

見るとワイヤーアートのリングを付けている。

「ああ、これ? そう。私の趣味」

「綺麗ですね。天然石ですか? 」

向井も細かく編み込まれた指輪を見て、
感心するように言った。

「私、図書館で働いていたでしょ。
そこにワイヤーアートの本があって、
趣味で始めたら楽しくなっちゃって」

「趣味でこんなにすごいの作れるんだ」

アートンもそばに来て指輪をじっと見た。

「覚えるまで時間はかかるけど、
好きな石で作れるし楽しいですよ。
私はこれを販売もしてたんです」

「えっ? 売ってたの? プロじゃん」

エナトが驚きの声を上げた。

「そんなに大したことじゃないの。
図書館前の通りで月に一回、
ハンドメイド空の下イベントがあって、
そこで売ってたの。
売れれば新しい材料買えるし、
いっぱい作れるじゃない」

「へえ~」

向井も感心するように頷いた。

「じゃあ、私もみんなと一緒に食べよう」

弥生は笑いながら安達と早紀の近くに歩いて行った。

「安達君は全部揃えたの? 凄いね」

安達が持っているキーホルダーを見て弥生が声をかける。

「安達君のああいう顔が見られるとは、
私も感慨深いです」

ぬっと現れた冥王に向井達が驚いて体を引いた。

「びっくりさせないでくださいよ」

「…………」

意気消沈している冥王にエナトが声をかけた。

「何かあったんですか? 」

「田所君も佐久間君もキーホルダーは牧野君にあげるって」

「まあ、子供の方に優先権ありますからね」

アートンが笑う。

「牧野君は子供じゃないです」

「冥王は牧野君よりずっと大人でしょ。
まだバーガー取りに来ていない人いますから、
聞いてみたらどうですか? 」

「そうする。牧野君にコンプリートされたら悔しいです」

そういった後、

「さっき、弥生ちゃんが指輪を売ってたって、
言ってたじゃないですか」

「言ってましたね」

「私はいいことを思いつきました」

また、変な事じゃないだろうな。

向井が怪訝そうな顔をして冥王を見ると、

「今工房でみんなが色々作ってるじゃないですか。
あれをイベントで売ってみたらどうでしょう。
題して、
冥界作品を下界のフリマで現金収入してみよう作戦? 」

「で、それは誰がやるんですか? 」

「決まってるでしょう。向井君ですよ」

「嫌ですよ。もう。
これ以上仕事を増やさないでください」

「ええ~やろうよ~私が作ったものも売りたいです。
楽しそうじゃないですか」

「冥王が作ったものなんて、プレミア? 」

エナトが笑った。

そんな話をしていると、

「シェデム連れてきた」

牧野がシェデムの手を引っ張ってやってきた。

「今そこで牧野につかまった。
ハンバーガー取りに来いっていうんで頂きに来ました」

シェデムはそういうと、

「あ~いいにおい。私お腹が空いてたんですよね」

とバーガーを受け取った。

「シェデムはいらないって言うから、
田所と佐久間の分も入れて、
俺も四種類になったぞ。あと二種類で全種類だ~」

牧野はどうだというように冥王を見た。

「シェデムも牧野君にあげるなら私にくれればいいのに」

冥王の拗ねた言葉に、

「冥王はこれが欲しかったんですか? 
前もって言ってくれれば譲りましたよ」

シェデムはそういうと、
バーガーをもって仕事に戻っていった。

「私は確か、
ここで一番偉いはずなのにみんな冷たいです」

「人望の問題じゃないの」

牧野はハンバーガーを手にソファーに歩いて行った。

「め、冥王。みんな冥王が好きだから大丈夫ですよ。
さて、俺も仕事に戻ろう」

エナトはそういうと、
バーガーを手にそそくさと部屋を出て行った。

アートンはそれを見てケラケラ笑う。

それと入れ替わりにエルフが入ってきた。

「ハンバーガーがあるって聞いたんだけど」

「ありますよ。どうぞ」

「有難う。あっ、ゾンビ少年。これも貰っていいの? 」

「いいですよ」

「エルフは貰うんだ」

冥王がぽつんとつぶやく。

「これ面白いですよね。俺、好きなんですよ」

エルフは楽しそうに、
キーホルダーを揺らしながら出て行った。

「冥王もハンバーガーを食べながら、
ここで待ってたらどうですか? 
誰かは譲ってくれるかもしれませんよ」

向井は笑いながらバーガーを冥王に渡した。


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八雲翔
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