見出し画像

街が好きという話

 ヘッダーはシカゴです。街中は日中でも相当緊張したし、夜中はパトカーのサイレンが鳴りやまなかったし、ここまでの摩天楼の林は見るだけでくらくらして宙にういているような感覚になった。

 ただ、基本的に都会、というか街は好きで、日本においては疲れるということもあまりない。ペーパードライバーゆえ徒歩圏の充実度や公共交通機関が必須というのもある。けれども、山や海や川に行ってリフレッシュしたくなる、リフレッシュできる、という感覚がアラフォー手前になったこの年齢でもまだしっくりこない。今住んでいるオフィス街はつまらないと思うけれども息がつまるようなほどではない。ちょっと緑のある住宅街エリアに出てしまえば、そこそこにぎわっていてもそこで十分気分転換できる。東京でも、住んでいた少し下町の雰囲気があるエリアが心地よくて、それ以上に自然や静けさを求めたいとは思わなかった。

 祖父母のエリアは田舎と呼べるところだったけれど、正直その自然に囲まれ空気が澄んでいることより、電気のない道、人の目がないようである感じ、虫や暴風雨や日用品の買い出しまでの遠さ、などをハードに感じていて、とてもこういうところでは暮らしていけなさそうだ、と思っていた。観光としての山登りでも、リフレッシュどころか、ここから落ちたらどこまでいくんだろうとか、変な虫や毒で数日後に病気になったらどうしようとか、この植物あれだっけこれだっけとか、苔たちの住み分けどうなってるんだろうとか、この樹皮好きだなとか、ひたすら頭が忙しく、体力的なものと合わせてどっと疲れてしまう。動物も植物も無脊椎動物も好きだけれど、太刀打ちできない自然の力の怖さが常に勝ってしまう。癒しどころか専ら圧倒される。

 一方、街でも、高層マンションとかキラキラの駅前は生活感があまりない分、息がつまる感じはする。そこそこの密度があって、人の暮らしを身近に感じられるところが一番安心感がある。商店街とか、複数の鉢に囲まれている住宅とか、たまに小さい寺や神社があるような風景で、飲食店では昼間からオーナーと世間話をする常連客がいるとか、京都の四条河原町とか大阪の谷町線沿いとかも。ただ関西はさらにふるさとフィルターがかかってしまうけれども。

 住んだことはないし、これまで3度、2泊ずつ程度でしか訪れたことはないけれど、よく聞くニューヨークの魅力はこういうところなのかもなあと何となく思っている。色んな意味で安心していられるような場所とはいえないのに、マンハッタンは何度も行きたくなる魅力がある。建物や構造が似ていても銀座の魅力とは違う。競争も格差も激しいのは見てとれるけれど、緩い人のつながり・コミュニティが色んなレベルで存在しているのも感じられる。それが、同調圧力のコミュニティと違って、むしろこれまで読んできたアメリカ文学の孤独感にも通じるところがあって、ただそれでも、たくさん人間が集まって生きている、その分の温度感がちゃんとあるというか。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集