夜の走行
夜に浮遊していた魔法の絨毯が、信号の目の色をうかがいながらその下を抜ける。
都道七号線に入りひた走る、眩いばかり、聖なるひかりの都内。
前方に数珠繋がりのテールランプ。ふと気づけば停滞に陥っていた。
車道がゆっくり脈打つ。脈打って脈打つと脈が速くなってふたたび走り出す。
「次、左折です」とくりかえすナビによりマップ上にループが生じ、ひかりの波を渦と巻く。
明滅するひかりの波、さざ波あら波、波の満ち干きのなかに生まれる奇跡を求めて溺れあう。
円周率のまぼろしを見ながら走った、走り廻った、そんな今夜描いた円環がいま閉じられる。
星月の力のまにまに魔法の絨毯を降りる。静かなる刻限、都心の駐車場のサンクチュアリ。
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